危機を立て直し高まる信頼感
一流の監督の条件とは何だろうか。優勝に導ける監督か、はたまた多種多様な戦術を持つ監督か。筆者は「一度悪くなった状況を立て直せる監督」だと考える。
就任後、チームの順位を上昇させられる監督は少なくないが、数年指揮を執っていると大抵どこかで流れが悪い時期が訪れる。その流れを断ち切れずに解任や辞任となる監督は実に多く、一度崩れたチームを立て直せる監督は一握り。クラブもそう考えるからこそ、多くのケースで監督交代を選択する。
福岡も、2022シーズンに流れの悪い時期を経た。チーム内に新型コロナウイルスが蔓延し、第22節から第29節まで8試合未勝利(2分6敗)。J1参入プレーオフ出場圏となる16位まで順位を落とし、J1残留に向けて黄色信号が灯った。しかし、クラブの継続路線はブレることなく、チームは最後の5試合を3勝1分1敗で駆け抜けて残留に成功。この立て直しにより、長谷部監督とチームへのサポーターからの信頼感はさらに高まることとなった。
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意図的な継続路線を採れている
そして2023シーズン、福岡は前評判の低さを覆すとともに、J1で3年目を迎えたことによる効果を発揮してきている。まず、スタッフや主力選手のほとんどをチームに残せており、意図的な継続路線を採れていること。一見地味にも見え、前評判の低さの理由でもあるのだが、チームの柱を作り直すことなくピンポイント補強で肉付け、という堅実な強化を図れている。
加えて、成績のみが要因ではないものの、過去には良好とはいえない時期もあった福岡県内の強豪校との関係も改善。九州随一の実績を持つ福岡大学から、FW鶴野怜樹、GK菅沼一晃、MF重見柾斗と2年間で3人の加入が発表されたのは偶然ではない。
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地元では動員数に課題も
ただし、福岡に関するすべてが順調というわけではない。見事な成績とは裏腹に、ホームのベスト電器スタジアムの平均観客動員数が、第7節終了時点で7,153人であること。これはリーグ最下位の数字だ。劇的な勝利が多くサポーターで沸くスタジアムには、一方で空席が目立つ。
福岡にはプロ野球の人気球団である福岡ソフトバンクホークスが存在するが、福岡市でタクシーに乗ると「ホークス勝ったばい」と言われるのは福岡あるあるの1つ。その人気に押され、在福メディアでアビスパ福岡について報じられる機会は少ない。喜びに満ち溢れるサポーターと、試合結果や順位を知らない多くの県民の間には垣根があるのが実情だ。
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