重要食用魚であるホッケが、こちらも重要魚介であるコンブの養殖の邪魔をしていることが調査により判明。その理由はちょっと意外なものでした。
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ホッケがコンブ養殖に被害をもたらす
コンブの養殖が盛んな道南地方の南茅部町。ここでは数年前より、コンブ養殖が何者かに邪魔される被害が出ていました。
コンブの養殖では、種付け期になるとコンブの種苗を、糸で養殖ロープに結び付ける作業を行います。この種苗糸が、何者かによって引き抜かれてしまう事例が相次いでいたのです。
被害額も無視できないレベルになっていたこの問題ですが、調査の結果、種苗糸を引き抜いていた犯人は魚の「ホッケ」であったことが判明したそうです。
ホッケってどんな魚?
我が国では「干物用の魚」として知名度の高い食用魚・ホッケ。全国の磯に生息するアイナメと近い仲間であり、体形もよく似ていますが、磯からあまり動き回らないアイナメと異なり、特に若いホッケは回遊魚的な性質を持ちます。
普段は水深100mほどのやや深い場所に棲む彼らですが、産卵期には浅場に押し寄せ、沿岸で盛んに漁獲されます。
旬の時期にはかなりの量が水揚げされるのですが、一方で本州以南で鮮魚を目にすることはあまりありません。それは、鮮度落ちが極めて早いから。脂が多く水分の多い身は、新鮮なら刺身にしても美味しいのですが、あっという間に独特の匂いが出てしまい、また食感も失われてしまいます。そのこともあり、本州以南では干物で流通することが多いのです。
コンブの種苗糸を抜いてしまう
そんなホッケですが、近縁のアイナメ同様肉食性が強い魚食魚です。中型以上の個体はイワシなどの小魚を追い回して食べ、ルアー釣りの好ターゲットでもあります。ではなぜ、コンブ養殖に被害をもたらしているのでしょうか。
実は、彼らはコンブを食べようとしたり、利用しようとしてその種苗糸を引き抜いているのではありませんでした。コンブ養殖のロープに生息している甲殻類を食べようとした結果、故意にではなく種苗糸を引き抜いてしまっていたのだと判明したのです。
若いホッケが主食としているイワシの回遊量が少ない年には、特に大きな被害が出ていることもわかりました。これはもちろん、イワシを食べられなかったぶん、甲殻類を食べようとする個体が増えたことが原因と見られます。
南茅部町の漁協では、今回の調査結果を踏まえ、種苗糸を短くしホッケに引き抜かれにくくするといった対策をとるということです。
<脇本哲朗/サカナ研究所>
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