全国各地で猛威を振るう外来種。その中に近年「ヒトが生み出したもの」が目立つようになってきています。
(アイキャッチ画像提供:PhotoAC)
「人工巨大魚」が猛威を振るう?
いま、自然界に存在しないはずのとある「人工巨大魚」が鹿児島湾で大発生しています。
その魚とは「クエタマ」。在来種の高級魚であるクエと、日本に生息しないタマカイという魚を掛け合わせて作られたハイブリッド種です。
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クエタマは成長が早く味も良いため、鹿児島湾内で養殖されていたのですが、いま自然環境下でしばしば発見・報告されています。漁師の網に掛かるほか、釣り人からの「釣れた」という報告も相次いでいるそうです。
なぜ逸出したのかは不明ですが、台風により養殖網が破れたといううわさもあるといいます。
「赤く光るメダカ」で逮捕者が出る
一方、そんな巨大なクエタマと対照的ともいえる「小さなメダカ」についても、いま自然界への逸出が問題になっています。
今月中ごろ、とあるメダカを未承認で飼育、販売したなどとして、自称メダカ愛好家が警視庁に逮捕されました。そのメダカは、遺伝子改変によって、赤外線を当てると赤く発光するという特徴がありました。
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もともと研究用であったこのメダカですが、研究者によって違法にメダカ愛好家の手にわたり、そこから闇ルートで広がっていったとみられています。
またこの件では、逮捕された一人が、警察の取り調べを恐れて用水路にメダカを逃がしたことも判明しています。現時点ではこれによる自然界への影響は報告されていないといいますが、遺伝子かく乱などの悪影響を及ぼす可能性は大いにあります。
「ヒトが生み出した魚」の取扱ルール
今回のクエタマやメダカのような「人工改良によって作られた観賞魚や産業魚」が自然界に逸出するリスクは、年々拡大していると言えます。
そのため最近ではこれらの魚を、国外からの外来魚、国内外来魚に並ぶ「第3の外来魚」として規定し、そのリスクを知らしめようという動きがあります。個人的には罰則を強化することで安易にこれらの魚が逸出しないようにすべきだと考えています。
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上記の件で言うと、メダカについては、遺伝子組み換え技術によって生み出された生物の使用を規制する法律である「カルタヘナ法」によって取り締まることができました。しかし、クエタマを逃がした漁業者については取り締まりが行われていません。
メダカの逸出が無害ということは全くありませんが、魚食性の大型魚であるクエタマのほうが環境や生態系にもたらすダメージは大きくなりやすいと言えるため、それを取り締まれないのは法の不備と言わざるを得ません。今後同様のことが起きないためのルール作りが必要でしょう。
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<脇本 哲朗/サカナ研究所>
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