コロナ3年目を迎えた22年度のアイス市場は、上期に夏場の猛暑と適度な残暑や、下期に各社注力した「冬アイス」で需要を喚起する施策が奏功し、過去最高売上高の5千400億円、前年比3%増で着地を見込む。市場は17年までの10年間で3千500億円から5千億円へと急成長したが、18年以降の4年間は踊り場状態が続いていた。今期は夏の猛暑が味方し上期を3%増で通過、下期も想定外の天候に翻弄されることもなく、上期の貯金を下期につなぐことができた。

今期は、幅広い喫食シーンの提案やSNSの活用、魅力のある新商品などで春先から好調にスタートした。暖かい気温や値上げ前の仮需を味方につけた4~5月は市況が3%を超えたが、6月は異例の早さで夏が到来したかと思えば戻り梅雨に苦戦、7月に4~5月の貯金を切り崩した。その後は雨や台風の影響はあったものの、猛暑に見舞われた8月と適度な残暑の9月と続き、上期は3%増での着地となった。

下期は冬の始まりを感じる寒さで10月が7%減(昨年15%増)となったが、11月は暖かな気候で8%増と絶好調で盛り返し、12月はたびたび強い寒気に襲われたが「冬仕立て」のアイスや特別感のある限定品の好調から4%増で通過、1~2月は前半の暖かな気温が味方し、価格改定を控える3月を前に仮需が発生したことも数字を引き上げた――というのが今期の流れになっている。

昨年6月以降、大手メーカー各社は価格改定を実施した。アイス市場は天候要因が大きく影響の程度が読みにくいが、「想定ほど大きな消費減退にはつながらなかった」というのが多くのメーカーの見解だ。日本アイスクリーム協会が昨年10月に15歳以上の男女1千400人を対象とした調査によると、前年よりもアイスクリームの購入機会が「増えたと思う」人は約40%で、「減ったと思う」の9・3%を大きく上回った。「変わらないと思う」は約51%。アイスに「価格以上の価値がある」「価格に見合った価値がある」と答えた人はあわせて約85%だったことからも需要の底堅さがうかがえる。

今春は「ガリガリ君」(赤城乳業)、「サクレレモン」(フタバ食品)、「チョコモナカジャンボ」(森永製菓)、「あずきバー」(井村屋)などロングセラーのリニューアルのほか、森永乳業の「パルム」初のチョコミント、ハーゲンダッツ ジャパンが満を持して発売する体験型新シリーズ「スプーン クラッシュ」や原材料に生乳のみを使用した明治の「明治 ディアミルク」など豊富なラインアップで市場を活性化していく。

提供元・食品新聞

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