今年も自律型移動ロボットによる競技会「ロボカップ(RoboCup)」が開催されます。
特にサッカー部門では、毎年人型ロボットたちの熱い戦いが繰り広げられています。
そして今回は、アメリカ・カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)のチームが開発した人型ロボット「アルテミス(ARTEMIS)」に注目が集まっています。
アルテミスは本物のサッカー選手のような強いフィジカルを備えており、人間に体当たりされたり蹴られたりしても転倒しないのです。
詳細は、2023年3月10日付の『UCLAニュースルーム』で公開されました。
メッシを超える!? フィジカル最強のロボット「アルテミス」
サッカーで勝利するには、テクニック以外にも強靭なフィジカルが必要です。
相手に体当たりされてもボールを保持し続けるには、強い体幹と筋力、優れたバランス感覚が求められます。
もちろん、こうしたフィジカルの強さは、どんな人間にもある程度備わっており、日常生活のあらゆる場面で役立っています。
スポーツを楽しめるのも、満員電車に乗れるのも、人間が持つ絶妙なバランス感覚と筋力のおかげなのです。
対照的に人型ロボットのほとんどは、人間のようなフィジカルの強さを未だに備えていません。
私たちは高性能な人型ロボットを見てきましたが、大抵の場合、転倒しないよう近くで人間が見守っています。
人型ロボットと乱雑に肩を組んだり、体をぶつけあったりするような映像はほとんどありませんでした。
ところが、現在開発中の人型ロボット「アルテミス」は、従来のロボットたちをはるかに超えた驚異のフィジカルを獲得しています。
このロボットは、ロボット競技会「ロボカップ」で5回優勝しているUCLAの「ロボット機構研究室(RoMeLa:Robotics & Mechanisms Laboratory)」が開発したのものです。
アルテミスの大きな特徴は、アクチュエーター(エネルギーから動きを生み出す装置)が、本物の筋肉のように動くようデザインされていることです。
柔らかく弾力性のあるアクチュエーターが、まるで人間のような動きを与えるのです。
そしてこのアクチュエーターと各部のセンサーを組み合わせることで、素早い応答が可能になり、高いバランス性能と俊敏性が得られます。
例えば下の動画では、アルテミスが小走りしています。
従来のロボットでよく見かけるのは、「片方の足を接地させて、もう片方の足を上げる」というものですが、アルテミスは、人間の走り方と同じく、両足とも地面から離れる瞬間があります。
またこうした俊敏性により、アルテミスは人型ロボットとして世界最速の2.1m/sの歩行を達成しました。
さらにアルテミスは、その応答性により、外部の衝撃に対応して体勢を維持できます。
動画では、チームメイトがアルテミスを強く蹴ったり押したりしています。
またボールを当てたり、不安定な地形を歩かせたりしても、アルテミスが転倒することはありません。
まるでサッカー選手のような強靭なフィジカルを備えているのです。
それゆえ研究チームは、アルテミス(ARTEMIS)の名称が、「サッカーでメッシを超えるロボット(A Robot That Exceeds Messi In Soccer)」の略だとジョークを飛ばしています。
現在彼らは、2023年7月にフランスで開催されるロボカップ2023に向けて、アルテミスのサッカースキルを調整中です。
ロボカップ2023には45カ国から2500人の競技者が集まる予定であり、もしかしたらそこで、フィジカル最強のアルテミスが優勝する姿を見ることができるかもしれません。
参考文献
ARTEMIS – UCLA’s most advanced humanoid robot – gets ready for action
Meet the football playing robot that’s ‘better than Messi’: Watch as the full-sized bot sprints, jumps and walks just like a real human