『愛のコリーダ』『戦場のメリークリスマス』など、数々の名作を生み出した巨匠・大島渚監督が2013年に亡くなってから10年。
その唯一無二の映像世界と制作の舞台裏を膨大な資料によって解き明かす「没後10年 映画監督 大島渚」が、4月11日(火)~8月6日(日)、東京・京橋の国立映画アーカイブで開催される。
社会の暗部を鋭くえぐる大島渚監督作品
社会や人間の暗部をえぐり、ときに「問題作」と呼ばれるような挑戦的な作品を発表することで、鮮烈な軌跡を残した大島監督。その影響は映画界のみならず、日本社会そのものに大きな刺激を与え続けた。
観る人にとって、もっとも好きな作品や、優れた作品をひとつに絞るのはおそらく困難だ。
キャリアの初期、松竹撮影所で若い感性から生み出された『青春残酷物語』(1960年)や『日本の夜と霧』(1960年)。
自ら興したプロダクション「創造社」を基盤に次々と社会へ問いかけた『絞死刑』(1968年)、『少年』(1969年)、『儀式』(1971年)といった問題作。
そして世界をセンセーションに巻き込んだ国際的合作『愛のコリーダ』(1976年)や『戦場のメリークリスマス』(1983年)でその映画表現は頂点に達する。
絶えず映画の自由を追い求め、作品ごとに主題やスタイルを刷新したという大島監督。映画人としての苛烈な生涯を展覧会でたどる。
膨大な資料を読み解く「没後10年 映画監督 大島渚」
展覧会では、没後10年を迎えてなお評価が高まる大島渚監督の映像世界とその創作の舞台裏を、監督自らが体系的に遺した膨大な資料によって解き明かす。
展示構成は『キネマ旬報』誌が選ぶ「映画本大賞2021」で第1位を獲得した、樋口尚文氏の著作『大島渚全映画秘蔵資料集成』を踏襲しつつ、国立映画アーカイブ独自のコーナーを加える。
第1章「出生から学生時代、そして撮影所へ」から始まり、第7章「幻の企画と晩年」へと至る展示は、松竹退社と独立、その後の国際的活躍など大島監督の映画人生を一望する。樋口氏と検討を重ね、膨大な資料群から重要資料を厳選して展示した。
資料群の中でもとりわけ貴重なのは、これまで現存しないと伝えられてきた美術監督・戸田重昌氏に関するものだ。『白昼の通り魔』から『戦場のメリークリスマス』まで大島監督作品に深く関わった映画美術家の独創性を明らかにする。
会場では、大島監督作品劇場予告篇集のほか、真鍋理一郎氏、林光氏、武満徹氏、三木稔氏、坂本龍一氏という5人の作曲家たちの音楽も視聴でき、作品世界を映像・音響の両方から体験できる。