【なぐもんGO・65】 出張や旅に行くのもためらわれる今日、久しく飛行機に乗っていない人も多いと思う。そんな中、筆者は日本一周空の旅を楽しんでしまった。しかもファーストクラスで。ただ、GoToトラベルは適用されず、家を出てから半日もかからずに帰宅している。それもそのはず、全行程をバーチャルで楽しんで来たからだ。

FIRST AIRLINESの“池袋国際空港”(写真=BCN+Rより引用)

“池袋国際空港”発、世界行き

 利用したのは、FIRST AIRLINESが提供する疑似体験プログラム。西池袋にある“池袋国際空港”から、航空機による世界旅行を楽しめるサービスだ。予約制で、人気のコースは数カ月先まで埋まっている。筆者が申し込んだのは日曜日の早朝に出発する日本一周の旅。海外旅行は予約を取るのが難しいほどの人気だが、日本一周の旅は時間帯も相まって幸運にも予約がとれた。

席は間引いて、感染対策もとっている(写真=BCN+Rより引用)

 店舗が入っているのは雑居ビルの8階。副都心線の池袋駅C3出口を出て立教大学に向かって進み、「寿司屋が始めた海の丼」という飲食店で左に曲がった先の角にある。店舗のある階でエレベーターを降りると、独特な雑踏と航空便のアナウンスが聞こえてくる。目を閉じれば、空港の搭乗窓口の景色が頭に浮かんでくる。目を開けても、サイネージに表示されている“フライトスケジュール”や“搭乗手続き”など、雑居ビルの一室にも関わらず、まるで空港にいるかのような雰囲気を見事に醸し出していた。

フライトスケジュールを見ると様々な行き先がある(写真=BCN+Rより引用)

 受付では、FIRST AIRLINES専用の搭乗券と疑似パスポートを渡される。もちろん、パスポートには行き先のスタンプを押してもらえる。すべてのページを埋めると特典があるそうだ。デザインも本物に近く、雰囲気と相まって「これから飛行機に乗るのか……」と没入感が高まってくる。

FIRST AIRLINES専用の搭乗券とパスポート(写真=BCN+Rより引用)

いよいよ搭乗!座席は本物のファーストクラス

 手続きを終えれば“搭乗”だ。機体のような壁を横目に“機内”に入ると、ファーストクラスのシートがずらっと並んでいた。筆者はファーストクラスを利用した経験がないので、念のため確認したところ「トルコ航空」で実際に使われていたシートだそうだ。座り心地は抜群。リクライニングも深くリラックスできそうだ。しかし、機内の音がリアルに再現されており、少し緊張してしまった。

初めてみたファーストクラスのシート(トルコ航空)(写真=BCN+Rより引用)

 客室乗務員の所作もリアルで、全体にアナウンスする際は受話器を使って話すほか、英語でも案内。出発後の飲み物も聞かれた。お酒も選べたが、無難にコーヒーをチョイス。出発時刻が近づくと、酸素マスクや救命胴衣の使い方を説明するので、いよいよ本当に飛行機に乗っている気がしてきた。シートベルトのランプが点灯したので、シートベルトがしっかり締まっているのを確認して、出発を待つ。

救命胴衣の使い方を説明する客室乗務員(写真=BCN+Rより引用)

 離陸フェーズに入ると、エンジン音とともに飛行機が滑走路を進む際の振動を感じた。錯覚ではない。本当にシートが振動しているのだ。正面や左右の液晶ディスプレイにも滑走路を進む映像が流れている。

 ここにきて思わず身体に余計な力が入っているのを感じた。離陸時の緊張感が再現されている。そして、ついに離陸。独特の浮遊感が得られた気がした。筆者はどうやら、信じ込みやすいタイプのようだ。機体が安定して、シートベルトのサインが消えたら少しずつ落ち着いてきた。

映像で離陸の様子を映し出す。
エンジン音や振動と相まって臨場感が高まる(写真=BCN+Rより引用)

 機内を見回してみると、右側は液晶ディスプレイだが、左側と天井はプロジェクターで機内の窓や天井が再現されている。途中で富士山も見えた。その後、ヘッドマウントディスプレイが配られ、日本各地をツアーに従ってVRで観光。後半は、配られたタブレット端末で日本一周を楽しみながら“機内食”のような食事を楽しんだ。ちなみに、食事は配膳台で運ばれてきたが、本当のファーストクラスでは一人一人に運ばれてくるそうだ。勉強になった。

VRやタブレット端末を通して日本ツアーを楽しむ。
終始エンジン音は聞こえている(写真=BCN+Rより引用)

 フライト時間は約2時間。着陸時はさすがに雰囲気に慣れたためか、離陸時ほどの緊張はしなかった。しかし、久しく乗っていなかった飛行機を思い出す体験だったことは間違いない。

プロジェクターで飛行機の窓を演出している(写真=BCN+Rより引用)

行き先は徐々に拡充

 FIRST AIRLINESの阿部宏晃代表は、「ファーストクラスで旅をしてほしいという思いから、2016年にサービスを開始した。当時から反響があったが、コロナ禍で遠出が難しくなり、需要は増えていると感じる。ただ、席を間引くなど、感染対策はしっかりと整えている」と現状を説明する。

 人気のコースは2カ月ほど先まで予約で埋まっているため、行きたい国がある場合は早めに申し込みたい。11月からは行き先にスペインが加わるなど、コンテンツはこれからも徐々に拡充していく。海外に行くのは難しいが、せめて飛行機に乗っている気分や現地の景色を360度楽しみたいなら、おすすめのスポットだ。(BCN・南雲 亮平)

提供元・BCN+R

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