求められる再審制度の検証ーー真の人権救済のための法改正を
こうした検察と裁判所の“共犯関係”は、再審による人権救済を妨げ、再審の制度をひどく歪んだものにしている。
日本の再審の制度は、大きく2段階に分かれている。第一段階が再審を行うかどうかを決める再審請求審。そこで再審が認められれば、第2段階に入る。このやり直し裁判において、有罪か無罪かが決まる。検察は、ここで有罪の立証ができるし、無罪になった場合、控訴や上告もできる。
ところが現実には、再審請求審が事実上、有罪無罪を決める主戦場になり、検察は再審請求審では前述のように、とことん確定有罪判決を死守しようとする。その一方で、ひとたび再審が開始された後は、検察の主張はかなりあっさりしている。
先の「松橋事件」の再審では、検察側は冒頭陳述で「有罪であるとの新たな立証は行わない」と述べ、論告でも「裁判所の適切な判断を求める」と述べるに留まって、求刑を行わなかった。滋賀県の病院で入院患者の人工呼吸器を外したとして殺人罪で実刑判決が確定した元看護助手が雪冤を訴えていた事件でも、検察は再審請求審では最高裁まで争ったが、再審では求刑を行わず、「裁判所の適切な判断を求める」とした。いずれも、もちろん控訴はしていない。
袴田事件でも、検察は再審公判で有罪立証を見送る方向で検討している、との報道も一部で流れている。
冤罪の被害者のできるだけ早い救済のためには、検察が無駄に争うことなく再審を終わらせることが望ましいのは言うまでもない。袴田事件も、争点は論議し尽くされており、検察は早期の裁判終了に協力してほしいと思う。
ただ、再審を行うかどうかを決めるだけの再審請求審を、事実上の有罪無罪を決する場として、徹底的に争い、その結果やり直しの裁判は無罪を追認する場になっている、というのは、やはりおかしいのではないか。
しかも、再審請求審は公開が義務づけられていないため、ほとんどが非公開で行われる。事実上、有罪無罪を決める重要な裁判が、非公開というのは、憲法の裁判公開の原則に照らしても問題だと思う。
このほかにも、現在の再審制度には問題点が指摘されている。袴田事件では、死刑という究極の刑罰を科した判決に誤りがあり、それを正すのに40年以上もの時間がかかった。必ずやしっかりと検証し、制度の改善に結びつけなければならない。
(江川紹子/ジャーナリスト)
提供元・Business Journal
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