透明人間が誕生する日は意外と近いかも?

米カリフォルニア大学アーバイン校(UCI)はこのほど、イカの皮膚細胞にあるタンパク質「リフレクチン」をヒト細胞に組み込むことに成功したと発表しました。

イカはリフレクチンを使って光の反射や吸収の仕方を変え、体の透明度を自在に変化させられます。

実際に、リフレクチンを発現したヒト細胞は”透明から白色、白色から透明”へと、細胞の透明度の変化にも成功したとのことです。

研究の詳細は、2023年3月26日〜30日にかけて開催される「アメリカ化学会(ACS 2023)」にて発表されました。

タンパク質「リフレクチン」でどうやって透明度を変える?

同チームは以前から、イカのリフレクチン(タンパク質)に焦点を当てたカモフラージュ能力の研究を続けてきました。

イカは自然界屈指のカモフラージュの達人であり、天敵から逃れるために環境中に溶け込んだり、逆に獲物にバレないよう体色を変えて接近します。

特にチームが研究に用いる「カリフォルニアヤリイカ(学名:Doryteuthis opalescens)」は、外套膜をほぼ透明な状態から白色へ、白色から透明へと可逆的に変えることが可能です。

カリフォルニアヤリイカの成体
Credit: en.wikipedia

このプロセスは主に、イカの皮膚組織にある「白色素胞(Leucophore)」という細胞が担っています。

白色素胞には、先に述べた「リフレクチン」というタンパク質が含まれており、これが白色素胞の光の反射・吸収の仕方を変えてくれるのです。

具体的にいいますと、白色素胞では無数のリフレクチンが寄り集まってナノ構造を形成しており、筋繊維の伸び縮みによってリフレクチンの配置を変えることで、光の反射・吸収の仕方も変化させます。

「白色素胞」の模式図(無数のリフレクチンが塊となってナノ構造を作っている)
Credit: ACS – Human cells help researchers understand squid camouflage(youtube, 2023)

リフレクチンが密集していると光を反射率が上がって白色化し、リフレクチンが広がっていると透過率が上がって透明化するのです。

そこで研究主任のアロン・ゴロデツキー(Alon Gorodetsky)氏は「イカのこの特性をヒト細胞に組み込めば、リフレクチンナノ構造を形成させ、光の散乱をうまくコントロールできるのではないか」と考えました。