米国の中央銀行にあたるFRB(米連邦準備制度理事会)は、3月22日に0.25%の利上げを決定した。3月21、22日に開かれたFOMC(連邦公開市場委員会)において全会一致で決まった。既報したがシリコンバレー銀行(3月10日破綻)、シグニチャー銀行(3月12日破綻)があり、動向が注目されていたが結局「予定通り」インフレ抑制を優先させた小幅な利上げに踏み切った。アメリカの金融政策を決定するFOMCは年に8回行われて、その議論の中心は政策金利(上限)の設定である。2023年のその開催スケジュールは以下の通り。


第1回:1月31日・2月1日
第2回:3月21日・22日
第3回:5月2日・3日
第4回:6月13日・14日
第5回:7月25日・26日
第6回:9月19日・20日
第7回:10月31日・11月1日
第8回:12月12日・13日


2022年3月以降のアメリカの政策金利の推移は以下の通りだ。


3月+0.25→5月+0.5→6月+0.75→7月+0.75→9月+0.75→11月+0.75→12月+0.5→2月+0.25→3月+0.25


つまり2月24日のロシアのウクライナ侵攻の翌月の2022年3月から2023年3月まで実に政策金利がトータル4.75%アップしている。スタート時は0.25%だったから、現在の政策金利は5.0%だ。FRBのパウエル議長が目標に掲げているとされる5.0%には到達したのではないか、あるいは次の5月2、3日開催のFOMCで最後の0.25%利上げを行い、パウエル議長の考える利上げプロジェクト完了という見方が強いのだ。


金利が上がれば、マネーは株から債券にシフトするという定石通り、3月22日のNYダヴ平均株価の終値は3万2560ドル60セントから3万2030ドル11セントへ530ドル49セント、率にして−1.63%の下落。下落はしたが、まあ想定内の利下げだったと冷静な反応だったように思われる。むしろここで利上げをしなかったりしたら、逆にシリコンバレー銀行とシグニチャー銀行の破綻を重大視していると市場に思われるという動きなのではないかともとれる。パウエル議長は「シグニチャー銀行の破綻は経営の失敗が原因だ」と発言している。ちなみに翌日3月23日のNYダヴは+75ドル14セントで平静をとり戻している。


米国銀行2行の破綻以上に驚いたのは、スイスの第2位の投資銀行・金融サービスのクレディ・スイスが経営不安が強まり、同第1位のUBSに3月19日に約4500億円という安値で買収されるという「事件」が起こったことだ。クレディ・スイスの経営不安の表面化には、シリコンバレー銀行の破綻が大きく影響している。このクレディ・スイスの買収劇は、2008年リーマン・ショック(2008年9月15日)の時のBNPパリバの2007年の破綻を連想させる。リーマンブラザーズ破綻の原因にもなったサブプライムローンがBNPパリバの破綻の原因だった。今回のクレディ・スイスの経営不安も遠因はシリコンバレー銀行破綻ということでいずれもアメリカから災いはやって来ているのだ。


3月19日には、アマゾンが今年1月の1万8000人のリストラに続いて、9000人の追加削減の実施を発表した。わずか2カ月後に追加削減を発表するのだから、経営状況が急速に悪化しているとしか考えられない。どうも今後、リーマン・ショック並みの世界規模の金融危機があるとすれば、米国のIT産業の経営悪化がその震源になりそうな空気が漂い始めている。


こうしたアメリカ・ヨーロッパ経済の緊迫したムードをよそに、日本の株式市場は2万6500〜2万8700円のボックス相場がダラダラと続いている。


今後の動向としては、前述したように次のFOMCの会議のある5月2、3日までは日経平均株価、NYダヴ平均ともに基本的には一進一退の展開が予想される。しかし特に米国銀行に関しては、何か大きな動きがあることは警戒しておかねばならないだろう。一方日本では、4月9日付で植田和男日銀新総裁が誕生するが、その第一球がどんなものになるのかというのも焦点ではある。いずれにしても一歩間違えば、世界金融危機が勃発するという緊迫した状況が年内は続いていきそうだ。

文・三浦彰/提供元・SEVENTIE TWO

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