アーティスト・梅津庸一氏による、作品集『ポリネーター』刊行を記念した展覧会「遅すぎた青春、版画物語(転写、自己模倣、変奏曲)」が、4月1日(土)から19日(水)まで銀座 蔦屋書店にて開催される。
作品数は100点以上、そして制作期間は1カ月。梅津氏が妥協なく、本気で作り上げた版画の数々に注目したい。
梅津庸一初の版画展を東京・銀座で開催
梅津庸一氏は、1982年に山形県で生まれた美術家。絵画やドローイングのほか、近年は陶芸作品も手がけている。
同展は梅津氏初の本格的な作品集『ポリネーター』が4月13日(木)に発売されるのに伴い、出版記念展として開催される。梅津氏による100点以上に及ぶ多種多様なユニークプリントを中心に展示予定だ。また、制作プロセスを紹介するドキュメント映像も公開予定となっている。
さらに、4月8日(土)15時からは、展覧会場にて梅津氏とデザイナーの刈谷悠三氏、『美術手帖』編集長の岩渕貞哉氏の3名でトークを繰り広げる。定員は30名。申し込みの詳細は決定次第、銀座 蔦屋書店の特集ページで案内予定だ。
「版画家」の仕事を目指し作品を制作
今回の出品作品は、すべて東京都町田市の「版画工房カワラボ!」で作られた。ひょんなことからこの版画展が企画されたが、梅津氏は実は、これまでほとんど版画に触れたことがなかったという。それにもかかわらず制作期間は1カ月ほど。タイトなスケジュールの中で準備は進められた。
現代美術作家による版画といえば、代表作のアイコンをモチーフにしたエディション作品であるのが通例だろう。しかし、同展は一般的な版画展とは一線を画している。梅津氏は短い期間だからといって妥協する気はなかった。
今日、版画は芸術の一ジャンルとして知られているが、もともとは聖書をはじめとする書物の挿絵であり、世界のあり方に変革をもたらした一大メディアだった。
梅津氏自身も20代の頃、エルンスト・ヘッケルによるクラゲやヒトデ、有孔虫などが収められた『自然の芸術形態』に魅了され影響を受けた経験がある。
また現在、日本において版画を考えるうえで、「創作版画」と「教育版画運動」、そして昨今のアートマーケットで散見される現代美術作家による版画とでは意味合いや文脈が異なる。
梅津氏の今回の取り組みは、現代アート界で活動する作家が版画工房で手際よくエディション作品を作るようなものではなかった。先行世代のいわゆる「版画家」の仕事を意識し、その精神を内面化することを目指していた。
表現の手法に新たに“版画”を加えた、梅津氏の今後の展開に期待したい。
梅津庸一作品集『ポリネーター』刊行記念展「遅すぎた青春、版画物語(転写、自己模倣、変奏曲)」
会期:4月1日(土)~19日(水)※最終日は18時閉場
会場:銀座 蔦屋書店 GINZA ATRIUM(イベントスペース)
所在地:東京都中央区銀座6-10-1 GINZA SIX 6F
観覧料:無料
(IKKI)