緻密な分析で黒田氏を痛烈に批判
黒田日銀総裁の退任に向けて、10年に及んだ異次元金融緩和を総括する出版物、解説やインタビュー記事が多数、発表されています。黒田氏自身、日銀自身が「本当のところはどうなっているのか」の検証をし、日銀もその公表に取り組んでこなかったからでしょう。
異次元緩和や、これを軸にしたアベノミクスに「一定の成果」があったとする擁護派もいることはいます。一方、批判派の声があちこちで上がり、「このままでは末恐ろしい結末を迎える」という警告が聞かれます。植田新総裁は批判派の声をよく聞き、予想される恐ろしい近未来に対応し、本当のことを国民と市場に向けて語ってほしいと、私は思います。
日銀OBで、シンクタンクのエコノミストである河村小百合氏が「日本銀行・我が国に迫る危機」(講談社現代新書」という近著を出版しました。金融、財政、物価、諸外国の動向などについて、何十枚ものグラフ、表、データを駆使して、実証的に分析する本です。擁護派に多くみられる感覚的、楽観的、思い込みとは正反対の立場です。
河村氏は「黒田日銀は本当のことを語っていない。かたらない本当の理由がある」と、繰り返し指摘しています。「本当のことは何か」を考えてみるという問いかけをしているのでしょう。
世界は高インフレ局面に急展開し、一過性ではなく長期化の兆しがあります。海外ファンドなどは「日銀の異常な金融緩和政策の継続は無理だ」とみて、昨年来、国債の大規模な売り攻勢(金利上昇圧力)をかけています。

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河村氏は「ついに不穏な兆候が現れた。高インフレ、円安、海外市場の動き。日銀は国内外の経済・金融情勢に応じて、機動的に金利を引き上げることができなくなっている。日銀は超金融緩和からの転換を頑なに拒み続けている」と、指摘します。日銀は身動きできない、しない。
なぜ頑ななのか。「本当のところ、深刻な理由があるからだ。日銀関係者は本当の理由について自分たちから口にすることはない。隠している」と。日銀関係者とは、黒田氏をトップとする執行部のことでしょう。