ブラジル東海岸から船で3〜4日、およそ1100キロ行ったところに絶海の孤島・トリンダーデ島があります。
この島は自然豊かな熱帯の無人島であらゆる生物の楽園となっていますが、現在この場所に、プラスチックを取り込んだ未知の岩石が誕生しているようです。
ブラジル・パラナ連邦大学(UFPR)の研究チームは今回、同島に流れ着いた海洋プラスチックが現地の岩石と混ざり合って、新種のプラスチック岩を形成していることを発見しました。
この新たな岩石は「プラスチストーン(plastistones)」と呼ばれています。
これはまさに、人類が地球の生態系に重大な影響を与える意味で考案された地質時代「人新世(Anthropocene)」を象徴する産物です。
研究の詳細は、2022年9月に学術誌『Marine Pollution Bulletin』に掲載されています。
漂流したプラスチックが島の岩石と融合
UFPRの地質学者で、本研究主任のフェルナンダ・アベラール・サントス(Fernanda Avelar Santos)氏が初めてプラスチック岩を発見したのは2019年のことです。
氏は当初、博士論文のテーマである地滑りや浸食作用を調べるためにトリンダーデ島を訪ねたという。
ところがサントス氏はそこで、青緑色をした奇妙な外観の大きな岩石の露頭に出くわしたのです。
(露頭:野外で地層や岩石が露出した場所)
これは地質学に深く通じている氏にとってもまったく未知の物体でした。

そこで岩石のサンプルを持ち帰り、研究室で分析したところ、自然界にはない新種の岩石であることが判明したのです。
しかし、その正体はすぐに分かりました。
これはトリンダーデ島に元々あった堆積物に、漂流したプラスチックが浸食や熱によって溶けて混ざり、徐々に石化したものだったのです。
特に、岩石中に見られたプラスチックの主成分はほとんどが漁網の残骸だったといいます。
海に廃棄された漁網は、南米やアフリカなどの遠隔地から海流に乗ってトリンダーデ島に漂着することがよくあるという。
サントス氏は「これは海洋のプラスチックごみが島の堆積物と一体化するほど大量発生していることを意味する」と述べました。
さらに詳しく調査を進めたところ、こうした事例はすでに世界各地で散見されていることが明らかになります。