しかしこの法案を守ろうとすると、農業を基幹産業としているオランダで農家の経営を脅かすものであり、何千もの農家が家畜の数や経営規模を大幅縮小しなければならなくなる。政府に協力しなければ、完全廃業を余儀なくされる可能性も出てくる。このため、廃業を恐れる農家や農業団体は現在も大規模なデモを続けている(図2)。

図2 2022年7月4日のオランダのヴェンロ近郊の高速道路上の農家たちによるデモの様子(Fox News, 2023)。
今回、この法案に反対するBBBが地方選挙で躍進したことによって、ルッテ首相は上院の賛成を必要とする全ての法案を通すことが難しくなる。
BBBによると、農家は自然を大切にしており、これまで常に政府のルールに従って安全かつ高品質な食品を製造するために革新的かつ持続可能な方法を開発してきたという(DNYUZ, 2023)。強制的な農地買取りを視野に入れた政府の法案は、農家たちのそうした努力を反故にするものだったといえる。
オランダ国民は、自国の強みをよく理解していると思われる。その強みを捨ててまで政府が厳しいアンモニアの排出規制を推し進めるのであれば、それに見合う強い根拠(生態系の悪影響や水質汚染など)を示す必要があろう。しかしながら、政府の説明資料を見る限り家畜・アンモニア・生物多様性の間の因果関係は誰の目にも明らかとはいえない。政府は規制を進める前に、窒素問題の複雑さを正しく理解することが先決ではないだろうか。