フィナンシャル・アドバイザーなど「お金の専門家」の存在は知っているが、「実際に利用するのはお金持ちだけ」と思っている人も少なくないだろう。しかし平均的な所得、あるいはそれ以下の所得の人でも、お金の専門家に相談することで大きな恩恵があるという。
「資産額や所得に関係なく、フィナンシャル・アドバイザーを利用している人はそうでない人に比べ、流動資産や年金資産が増えた」との調査結果も報告されている。
お金持ちではない人はフィナンシャル・アドバイザーを、いつ、どんな時に利用すれば良いのか?専門家の意見を聞いてみよう。
お金持ちでなくても、流動資産が4割弱増える?
長寿と人口の変動について研究している英国のシンクタンクInternational Longevity Centre と保険・年金企業 Royal London が共同で行なった調査 では、フィナンシャル・アドバイザーに相談する利点が明確になっている。
2001~07年にかけて専門家からアドバイスを受けた消費者とそうでない消費者を比較したところ、2012~14年までに築き上げた流動資産や年金資産に著しい差が見られたという。
この調査では、対象者を高学歴で経済的に余裕がある「affluent(裕福な層)」と、低学歴で経済的に圧迫されている「just getting by(どうにかやりくりしている層)」に分け、専門家によるアドバイスが各層にあたえる影響を分析した。
アドバイスを 受けている「affluent」の流動資産は、アドバイスを受けていない裕福な層より平均17%、年金資産は16%多かった。アドバイスを受けている「just getting by」の流動資産は、アドバイスを受けていない同じ層より平均39%、年金資産は21%多かった。 また、「アドバイスが株投資と貯蓄の水準を上げることにつながった」とも報告されている。アドバイスを 受けている「affluent」はそうでない 裕福な層と比べると、貯蓄する人の割合 が平均6.7%高く、投資する人の割合も9.7%高かった。アドバイスを受けている「just getting by」はそうでない同じ層より、貯蓄する割合が9.7%高く、投資する割合は10.8%高かった。
9割がアドバイスに満足、実際に相談したのはわずか2割弱
調査によると専門家に相談した10人に9人が、アドバイスに満足している。しかし、2012~14年にかけてアドバイザーに相談した回答者はわずか16.8%。過去数年間に投資商品を購入した回答者ですら、約40%がアドバイスを受けず、個人年金商品を購入した回答者の78%が自力でフィナンシャル・プランを立てている。
「自分のお金は自分で管理できる」「家族や友人に無料で相談できる」「専門家に相談するほど資産を持っていない」などが、フィナンシャル・アドバイザーを利用しない一般的な理由として挙げられる。
特に近年は、ソフトウェアやアプリを使って、誰でも簡単にお金の管理や資産運用ができる時代だ。「わざわざサービス料金を支払ってまで、専門家に相談する必要はない」と考える人が多いのも不思議ではない。
専門家に相談すべき8つの機会
しかしUSNewsの金融ライター、マリアリン・ラポンシー 氏は専門家の意見や数々の事例に基づき、資産や年齢に関係なく、「専門家に相談すべき8つの機会」を挙げている。
1.初めて働き始めた時
2.結婚・離婚・死別した時
3.まとまった金額の現金を受け取った時
4.親の介護が必要になった時
5.子どもが生まれた時
6.資産を継承したい時
7.定年退職後のライフプランを立てたい時
8.25万ドル以上の資産を所有している時
「生活に大きな影響をおよぼす出来事」が相談の目安
初任給が年間2万ドルであろうと20万ドルであろうと 、まずはフィナンシャル・アドバイザーに相談する。専門家は老後のための貯蓄に関するガイダンスを示すだけではなく、福利厚生サービスを最大限に活用する方法に関するアドバイスも提供している。早めのライフプラン設計は、充実した経済基盤を築く上で大いに役立ってくれるはずだ。
フィナンシャル・アドバイザーのような第三者を間にはさむことで、資産と収入の共有について夫婦間(あるいは結婚を予定のカップル)で話し合いがしやすくなり、離婚の際には財政的損失を最小限に抑えることができる。
死別によって 財政が一転するケースもある。残された配偶者は以前よりも少ない収入での生活を余儀なくされる、あるいは家、生命保険金、投資といった資産管理の最善の方法を考える必要がある。「伴侶を失って初めて、自分でお金の管理をする」という人も少なくない。
資産相続、ボーナス、昇給など、まとまったお金が手に入ることは財政的健全性に恩恵をもたらす。しかし多くの人がせっかくの機会を活かしていない。
米国公認会計士協会(AICPA) のパーソナル・ファイナンス・スペシャリスト委員会(Personal Financial Specialist Committee)のメンバー、ロバート・ウェストリー氏 いわく、「棚ぼた式に手に入ったお金を急いで使おうとした時、間違いが起こる」。専門家からアドバイスを受けることは、こうした「間違い」を未然に防いでくれる。
最も効果的にお金を管理する
子どもの誕生や親の介護など、財政状況に大きな影響をおよぼす出来事が生じた場合も、お金のプロに相談すべきだ。
「資産を子どもや孫に譲りたい」のであれば、かしこい相続税対策 は必須となる。老後のためにコツコツと貯蓄することは大切だが、フィナンシャル・アドバイザーは「最も効果的に貯蓄したい」という希望を叶えてくれる。
資産が一定の水準を超えた場合、定期的に専門家に相談し、見直すことで、安全かつ効果的に、資産をさらに増やせるだろう。
文・アレン・琴子(英国在住フリーランスライター)/ZUU online
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