町野修斗(左)永木亮太(右)写真:Getty Images

2023明治安田生命J1リーグ第5節の全9試合が3月18日と19日に行われ、湘南ベルマーレは19日、敵地のベスト電器スタジアムでアビスパ福岡と対戦。最終スコア1-2で敗れた。

湘南の逃げ切り失敗の原因は何か。ここでは同試合を振り返るとともに、同クラブが磨き上げるべき戦い方について言及する。


アビスパ福岡vs湘南ベルマーレ、先発メンバー

福岡vs湘南:試合展開

この試合で先制したのは湘南だった。後半28分、MF平岡大陽の浮き球パスを受けたMF小野瀬康介が敵陣ペナルティエリアへ侵入し、福岡のGK永石拓海の頭上にシュートを突き刺す。その後は自陣後方や中盤で守備ブロックを敷き、逃げ切りを図ったが、後半51分と54分に福岡のFW山岸祐也のシュートを浴び、試合をひっくり返されている。


湘南ベルマーレ MF永木亮太 写真:Getty Images

効果的だった湘南のハイプレス回避術

この日もマイボール時[3-1-4-2]、守備時[5-3-2]の布陣で臨んだ湘南は、MF永木亮太を囮(おとり)にするパスワークで、福岡のハイプレスを回避。基本布陣[3-4-2-1]の福岡が、ルキアンと山岸の両FW、MF金森健志の計3人を起点に湘南の3センターバックにプレスをかけようとしたところ、アウェイチームが永木を経由しないパス回しを披露。最終ラインからインサイドハーフの小野瀬への縦パスで、福岡の前線からの守備を掻い潜った。

今季の湘南は、自陣後方での各選手のボールタッチ数が少なく、ボールを保持する時間も短め。ワンタッチパスを駆使し、迅速に敵陣へボールを運ぶという原則がチーム内に浸透しており、永木を経由すべき場面とそうでない状況の判断も、今季序盤に関しては各選手が的確に行えている。今第5節でも永木を囮にするパスワークが功を奏し、何度も敵陣ペナルティエリアへ侵入した。この戦い方は今後も継続すべきだろう。

湘南ベルマーレ FW町野修斗 写真:Getty Images

福岡のロングパス攻勢に屈する

湘南の山口智監督は、後半39分にDF舘幸希とMF山田直輝を投入し、布陣を[3-4-2-1](自陣撤退時[5-4-1])に変更。この直後に福岡の長谷部茂利監督もDF前嶋洋太とFW佐藤凌我を投入し、[4-1-3-2]への布陣変更を行った。

両軍が布陣を変えた直後は、湘南のFW町野修斗が福岡のMF中村駿を捕捉し、FWタリクと山田がホームチームの2センターバック(奈良竜樹と宮大樹の両DF)に睨みをきかせる作戦が機能していた。しかし町野がピッチから退いた後半44分以降、アウェイチームの守備の段取りが曖昧に。ハイプレスから自陣への撤退守備へ徐々に移行し、こぼれ球の回収に専念する意図が窺えたが、福岡のロングパスの出どころを潰す作業が疎かになったため、湘南は劣勢に立たされた。

後半アディショナルタイムの両軍の布陣

後半51分には、センターサークル内でボールを受けようとした福岡のDF宮へのタリクの守備対応が遅れており、簡単にロングパスを繰り出されている。この浮き球を収めようとした福岡の長身FWウェリントンに対する、湘南陣営のマークの受け渡しも失敗。ウェリントンのヘディングパスが起点となり、福岡のFW山岸が同点ゴールを挙げている。湘南にとっては複数の守備エラーが重なり、悔やまれる失点となった。

今季のリーグ戦全5試合で失点を喫している湘南が今後磨き上げるべきは、言うまでもなく試合終盤の守備である。町野が交代で退くまでは前線からの守備は機能していただけに、途中投入される選手のタスク遂行能力や戦術理解力が、今後重要になってくるだろう。