ロシアには正規軍のほか民間軍事請負会社「ワグネル・グループ」が存在する。ウクライナ戦争では両者がいがみ合うなど険悪な関係となってきた。クレムリンはワグネル・グループの存在を否定してきたが、ウクライナ戦争ではもはやその存在を無視できなくなってきた。

プーチン大統領、レニングラード包囲戦解放80周年記念に参加(2023年1月18日、クレムリン公式サイトから)

ウクライナ軍の攻勢を受け、厳しい状況下にある正規のロシア軍に対し、ワグネル・グループの傭兵隊がウクライナ東部のドネツク地方での戦闘で正規のロシア軍を指揮下に置いている。今年に入り、ワグネル傭兵隊はウクライナ東部のソレダルの戦いでウクライナ軍を破り、制圧した。ロシア国防省は当初、「ソレダルの制圧」を否定したが、その2日後、「ロシア軍はソルダルを奪った」と発表し、あたかもロシア軍が制圧したかのように報じた。それに対し、ワグネル・グループの創設者エフゲニー・プリゴジン氏は「ロシア軍は常にわれわれの戦果を盗み取る」と批判する、といった具合だ。

ワグネル傭兵隊とロシア軍の対立という情報について、クレムリンのドミトリー・ペスコフ報道官は16日、「メディアが生み出した情報に過ぎない」と指摘し、「われわれはロシア軍の英雄もワグネルの英雄も知っている。彼らはわれわれの記憶に永遠に残るだろう。彼らは祖国のために戦っているのだ」と述べている。

オリガルヒのエフゲニー・プリゴジン氏は2014年にウクライナのドンバス戦争に戦闘員を派遣するために「ワグネル・グループ」を設立。プーチン氏の全面的支援を受けるプリゴジン氏はクレムリン内でもその存在感を強めてきた。ワグネル・グループは「プーチンの私兵」と呼ばれている。

ワグネル・グループの傭兵軍は最大5万人規模と推定され、そのうち1万人が戦闘経験のあるベテラン戦闘人。他の4万人はロシアの刑務所からの囚人兵の新兵という。ワグネル傭兵のやり方は、何年も国際的な批判の対象となってきた。2014年以来、傭兵は、シリア、マリ、スーダン、中央アフリカ共和国など、ロシアにとって戦略的および経済的に関心のあるいくつかの国で活動した。彼らは重大な戦争犯罪を犯し、人権侵害で繰り返し告発されている。