4月9日に投票日が迫った大阪の府知事・市長を争うW選挙。4年前は「大阪都構想」も焦点となり、府内外からも大きな注目を浴びた。だが、今回は明らかに大阪維新の会圧勝ムードが漂うなか、直前に迫りつつある現在になっても盛り上がりに欠けている。

 いくつか理由はあるが、第一に挙げられるのが維新側の余裕だ。ここ8年続いた維新優勢の構図は、どうやら変わりそうもない。日本維新の会に所属する中堅議員は、次のように話す。

「正直、今回のW選はすでに勝敗は決しているとみています。大阪はほぼ何もしなくても勝てるでしょう。吉村洋文知事は再選確実として、市長選挙に立候補する横山秀幸府議は、将来の幹部となることが間違いない、首長選挙のためにとっておいた格好の“タマ”です。今の党内の最優先事項は、馬場伸幸(日本維新の会)代表が掲げた『地方議員の600議席獲得』で、その実現に向けてやっきになっています。

 大阪よりも地方。首長選挙よりも市議会、府議会、府下の市議会議員をいかに獲得するか。さらにいえば、いかに近畿、関東で議席を伸ばせるかが焦点になってきます。現状、700議席は達成できそうと見込んでおり、今は議員が候補者擁立のために慌ただしく動き回っています」

 この維新の楽勝ムードを助長させたのが、大阪では野党となる自民党、立憲民主党などの足並みがなかなか揃わなかったことも大きい。前回は府、市共に選挙ギリギリで候補者擁立に至ったが、今回は市長選を北野妙子市議、府知事選挙は法学者の谷口真由美氏の擁立を早々と決めている。

 だが、「決して思い通りの選出ではなかった」と、自民党大阪府連の関係者が本音を明かす。

「正直に言うと、今回は政界以外から候補者を持ってきたかったのです。そんななかで、もともと本命候補は2人いました。読売テレビの超人気アナウンサーと、関西テレビの若手アナウンサーです。しかし、『負け戦に乗れない』と早々に断られてしまったのです。そのほかにも、知名度がある芸能人なども候補者として考えていましたが、交渉がうまくまとまりませんでした。国政選挙を睨んで、現職の議員は出しにくい。そこで苦肉の策として選ばれたのが、北野さんと谷口さんでした」

 中央政局に目を向けると、維新と立憲が政策上での共闘関係を結び、“自民寄り”とされた国民民主党の態度が煮えきらず、自民幹部は維新にも接触を強めている。そんななかで行われるW選は、ある種バランスの取り合い的な側面もあるのだ。

「自民党本部からすると、強烈な対抗馬を出して下手に維新を刺激したくないという意図もあるのでしょう。今回は政党色を極力出さない選挙ということもありますが、もともと勝ち目が薄いこともあり、本部からの応援はほとんど期待できません。茂木敏充幹事長は、特に維新とのバランスを大切にする方でもあるので。実際に党の調査では、知事選では約4倍離され、市長選も倍以上の開きが出ているのが現状です」(同)

 大阪の今後の政局を占う上でポイントとなるのは、公明党の動きでもある。現在、府議会では維新議員だけで過半数を占め、市議会でも今回の選挙で過半数を越えることがほぼ確実とみられている。そうなると、公明党と維新の中であった“協定”を結ぶ必要もなくなるというわけだ。

「市議会でも維新が過半数をとった場合、国政選挙でも維新は公明党に配慮する必要がなくなるので、全区で維新が候補を立ててくる可能性が高いでしょう。維新の“国政待機組”は溢れており、党としても強気に出るとみています。ただし、そうなってくると、もはや市民にとって健全な政策を望むことは難しい。圧倒的な地盤を持つということは、歪が生まれることと同義ですから」(在阪の全国紙行政担当記者)

 今後、大阪では万国博覧会やIR誘致という大きなイベントが控えている。だが、今回の選挙で維新としては、IR問題を議題に挙げることを、あえて控えている。すでに多方面から“維新利権”が生まれつつある今、W選挙は一時的にでも歯止めをかけるか、それとも加速させることになるのだろうか。

(文=Business Journal編集部)

提供元・Business Journal

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