米国で深刻化する「ペイデーローン」。米非営利融資関連調査機関Center for Responsible Lending(CRL)の調査によると、米ペイデーローンの平均年間利率(APR)は391%と非常に高い。それにも関わらず、「大学生の3人に1人がペイデーローンの利用を検討する」という、衝撃的な調査結果が報告されている。
同国のペイデーローン市場は90億ドルに膨らんでおり、テキサス州ではAPRが662%にも達している。若者を超高利ローンに駆り立てている要因は何なのだろう?
ペイデーローンとは?
「Payday Loan」という名が表す通り、消費者は自分の給与を担保に短期間の小口融資を受けることができる。通常のローンよりも手軽に素早く借り入れできる点が魅力だが、利息が極めて高く返済期間が短いため、余程慎重な返済計画がない限り、負債があっという間に膨らむという落とし穴がある。
CRLいわく、ペイデーローンは戦略的に低所得層をターゲットにしているが、借り手の次の給料から返済額を回収するため、貸し倒れのリスクが低い。クレジットスコアなどで返済能力が低いと判断された消費者や返済履歴のない学生や若者でも、比較的容易に借り入れできる。他社で融資を断られた消費者が「利息が高くても今すぐに借りられるならば」と、わらにもすがる気持ちで手を出し、返済地獄にはまっていくのだろう。
平均APRは州によって大きな差 テキサスはオレゴンの4倍以上
実際、利息はどれほど高いのか?
CRLが300ドルの融資に対して 大手ペイデーローン会社が提供している平均的なAPRを調べたところ、2017年の全米の平均APRは391%だった。しかし州によって数字に大きな差がでる。テキサス州では662%、ネバダ州では652%、バージニア州では602%など、平均を大幅に上回り、オレゴン州では154%、ニューメキシコ州では175%、コロラド州では214%と下回る。
クレカの平均APRは16%前後であり(CreditCards.com2018年8月データ )、その差は歴然としている。
利息に上限が設けられているのは 、アリゾナ州やモンタナ州などごく一部。多くの州で消費者がペイデーローン地獄から抜けだせず、苦しんでいる。上限といっても36%以下なので、クレカよりまだはるかに高い。
全米にはペイデーローンを提供する企業が2.3万社あるそうだが、これはマクドナルドの店舗数のほぼ2倍に値する(CNBC2018年8月1日付記事 )。
政府の学資ローンだけでは不足
CNBCがペイデーローンに興味がある約3700人の成人を対象に実施した調査では、最も強い関心を示したのはミレニアル世代(22~37歳)で、51%が「ペイデーローンの利用を真剣に検討している」と答えた。
しかし学生あるいは社会人になりたてのはずのZ世代(18~21歳)も38%が真剣に利用を検討しており、11%が「 大学にともなう費用を補うためにペイデーローンの利用を検討」、5%が「 過去2年で実際にペイデーローンを利用した経験がある」という結果だった。
ペイデーローンが若い世代を魅了している理由のひとつとして、一部の専門家は学資ローンを挙げている。
学資ローン情報サイト「studentloanhero.com」2018年6月25日付けの記事によると、政府が融資する学資ローンの上限は年間5000~1.25万ドルだが、この金額で学費や手数料がすべて補える大学は米国に1.55%しかない。ほとんどの大学の学費や手数料は、政府の上限を1.1万ドル以上上回る。
500ドルの負債が3カ月で1000ドルに
その結果、多くの学生が政府の学資ローンに上乗せして、民間の融資会社からも借り入れせざるを得ない。それでも生活費や急な出費に対応しきれず、新たな融資先を探す必要性が生じた場合、既に複数の融資を受けていると一般的な融資会社の審査に通りにくい。
そこで学生にも快く融資してくれるペイデーローンに走る学生が増える。しかし例えば平均金利391%、2週間の完済予定で500ドルを借りると、2週間後には575ドルを用意しなければならない。完済できないまま3カ月経過すると、1000ドルまで膨れあがる。あとはもう雪だるま式だ。
CNBCの取材に応じた21歳の学生は、「2週間だけペイデーローンを利用することを考えている」という。家賃とコミュニケーション料に回すはずだった学資ローンの払い戻しが、支払い期日の2週間後になるからだ。本人は「2週間だけ」と強調しているが、果たして本当に2週間で完済できるのだろうか?何らかの事情で払い戻しが遅れたり、急な出費が重なったりと、予期せぬ事態が起こるかもしれない。「すぐに返さなくてもいいなら、もう少し借りておこう」という誘惑に負けてしまう負債者も少なくないだろう。
利用者のほぼ4人に1人が9回以上再借り入れ
独立系非営利組織The Pew Charitable Trusts消費者金融部門のディレクター、ニック・ブールク氏はCNBCの取材で、「ペイデーローンは消費者をどっぷりつからせることで初めて、ビジネスとして成り立つ」ため、消費者がペイデーローンにどっぷりつかってしまうのは、「当然の成り行き」と指摘している。
ブールク氏によると、借り手が融資契約を4~8回更新あるいは再借り入れするまで収益性がないそうだ。Consumer Financial Protection Bureau調査からは、ペイデーローン利用者のほぼ4人に1人が9回以上再借り入れをしていることがわかっている。
文・アレン・琴子(英国在住フリーランスライター)/ZUU online
【関連記事 PR】
・iDeCo(イデコ)を40代から始めるのは遅いのか
・ゴールドカードのメリットや作り方
・「ふるさと納税」するなら知っておくべき5つのこと
・ポイント還元率の高いクレジットカード11選
・40代が知っておきたい保険の知識まとめ