メロー二氏は「伝統的な家族の価値観」を大事にするべきだという主張ですが、日本の皆さんのイメージと違い、近年のイタリアでは崩壊している家族が少なくありません。
もちろん欧州の北部に比べるとまだまだ伝統的な家族感が強い国で、 家族の結びつきは大変強固です。 ところが最近は都市部では核家族化が進んでいて、 経済的にも非常に厳しい状況で仕事を探すのが難しいところですから、 夫婦共働きが当たり前で、 長時間働く人も少なくありません。
私は国連専門機関の職員としてローマに4年間住んでいたのですが、 20年以上前からイタリアは大卒の高学歴の人でもコネがなければ正社員のポストを探すのは非常に大変でした。
イタリアの不況とコロナ禍で悪化しています。
イタリアは欧州の北部と異なり第1次産業や2次産業の割合が高く、 知識産業の発展があまり進んでいませんので、 ドイツのように工業が強いわけでもなく、 イギリスや北欧諸国のようにITや金融が強いわけでもありません。
仕事しても報酬は非常に低く、 40代でも月収が15万円などという人も少なくありません。 低学歴の人ではなく超一流大学を出た大卒の人です。
給料があまりにも安く仕事もないため結婚しない人や独身の人だらけです。
このような状況は日本に似ている部分があります。
元々家族の結びつきが強い土地ですから、 本来なら共働きなんかしないで、 奥さんは家にいて週末は家族で集まってのんびりと食事をしたいと望む人が多いのです。 ところが今の経済状況ではそれは無理だという家は少なくありません。
また海外に出稼ぎに行っている人も少なくないのです。
お金や仕事のことで揉めて離婚する夫婦も少なくありません。実はイタリアに住んでいる私の友人何名かも離婚しています。その理由はやはりお金と仕事が原因です。
そのような状況のイタリア人に「 伝統的な家族の価値観を取り戻しましょう」「家族みんなで安心して働ける社会にしましょう」 と言われたら投票しない人はいないでしょう。
シングルマザー家庭出身で、親の不仲に悩み、非正規の仕事を転々としてきた高卒のメロー二氏はまさに当事者ですから、主張には大変な説得力があるのです。
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