関サバや明石鯛など、美味な魚が漁獲される「海峡」の海。全国各地にそのような海がありますが、豊洲市場で「海峡もの」と呼ばれる魚が獲れる海は、もしかしたらちょっと予想外の場所かもしれません。

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ブランド化しやすい「海峡もの」の魚たち 中には海外の海峡出身の魚介も

「〇〇もの」の意味とは

皆さんは「常磐もの」「瀬戸内もの」といった言葉を聞いたことがありますか?

「~もの」という言葉はそれぞれの業界にあるかと思いますが、鮮魚流通の場において「~もの」という言葉は、上記の常磐もの、瀬戸内もののように「地名+もの」という構成のものがほとんど。

ブランド化しやすい「海峡もの」の魚たち 中には海外の海峡出身の魚介も魚市場の競り(提供:PhotoAC)

これは簡単に言うと、魚介類の産地を表す言葉。しかしただの産地ではなく、ブランド的価値のある産地であることが多いです。この言葉を用いる場合、売る側だけでなく買う側にも産地リテラシーが求められるので、一般消費者向けの魚屋よりも、プロ同士の取引場となる魚市場で用いられることが多くなっています。

「海峡もの」の魚が旨いわけ

そんな「〇〇もの」の中で比較的多いのが、海峡名やその周囲の地名にちなんだもの。例えば有名な「関もの」は関サバや関アジで知られる佐賀関の沖合「豊予海峡」で水揚げされるものです。

ブランド化しやすい「海峡もの」の魚たち 中には海外の海峡出身の魚介も関アジ(提供:PhotoAC)

また、タイやタコなどの「明石もの」は、本州と淡路島の間にある「明石海峡」で水揚げされるもの。同じくタイの「鳴門もの」は、潮流の速さが日本一ともいわれる鳴門海峡で獲れたものとなっています。

海峡は陸と陸に挟まれ狭くなっているので、速い潮流が流れます。そのような場所で流れに抗いながら育つ魚は筋肉質になり、また餌が潮流によって絶えず流れてくるために大きく育つと言われています。これらの理由から、海峡周りで獲れる魚はブランドとなりやすいのです。

「チャネルもの」とはどこのもの?

さて、そんな「海峡もの」ブランドの中に、我々のような鮮魚流通に関わらない一般人には想像しづらい、とある「海峡」の魚があります。

その魚とはズバリ「アジ」。豊洲市場など都心の卸売市場でしばしば扱われ「チャネルもの」と呼ばれています。チャネルとは海峡の英訳なので、これがいわゆる海峡ものの一種なのはわかるのですが、一体どこの海峡なのか推測するのは難しいでしょう。

ブランド化しやすい「海峡もの」の魚たち 中には海外の海峡出身の魚介も英仏(ドーバー)海峡(提供:PhotoAC)

実はこの「海峡」があるのは、日本ではなくヨーロッパ。世界でいちばん有名な海峡のひとつである英仏海峡のことを示すのです。世界史の舞台となってきたこの地は非常に著名であり、イギリスで「海峡(ザ・チャネル)」というとこの英仏海峡のことを指すのです。

この英仏海峡も速い潮が通す場所であり、そこで水揚げされるニシマアジは水揚げ量も多いため海外へと輸出されています。日本の関アジと同様に大型で脂乗りが良いニシマアジは、我が国においてもブランドとして認識され「チャネルもの」と呼ばれるようになったのです。

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<脇本 哲朗/サカナ研究所>

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