地球上にいるすべての野生動物(哺乳類)と人類の質量を比べたとき、重いのはどっちだろう?
そんな疑問を考えたことはないでしょうか?
こうした問題は実際測定することは不可能でも、かなり実態に近い数値を推定することは可能です。
最近、イスラエル・ワイツマン科学研究所(Weizmann Institute of Science)の植物・環境科学科に所属するロン・ミロ氏らの研究チームは、地球上の全人口の重さと全ての野生哺乳類の重さ、そして全ての家畜の重さを推定しました。
その結果、意外なことにもっとも総質量が大きいのは、家畜という結果になったといいます。
これは地球の環境問題を考える上で、何がどれほどの影響力を持っているか理解するために役立つ研究です。
研究の詳細は、2023年2月27日付の科学誌『PNAS』に掲載されています。
地球の哺乳類の「重さ」を調べる
環境問題に向き合ったり、動物の保護活動に取り組んだりする上で、それぞれの個体数を知ることは大切です。
しかしネズミ1匹とウシ1頭が生態に与える影響は全く異なります。
そのため個体数だけでなく、生物の量(生態学で「バイオマス」という)で比較することは大切です。

そこで今回、イスラエル・ワイツマン科学研究所のミロ氏ら研究チームは、地球に存在する哺乳類の「総質量」を種類ごとに算出・比較することにしました。
それぞれの総質量を算出するには、その種の個体数の情報が必要です。
そこで彼らは、既存のレポートをもとに392種の野生の陸生哺乳類の詳細なデータ(個体数を含む)を入手し、それらの総質量を算出しました。
しかし野生の陸生哺乳類は約6400種にも及ぶため、得られた個体数のデータは全種の約6%に過ぎません。(それでも野生の陸生哺乳類の総質量の半分以上を占めていました)
他の種は個体数のデータがないため、一般的な特徴(個々の体重、分布、栄養学や動物学に基づく情報)から推定する必要があります。
そこでチームは、392種の詳細なデータで機械学習計算モデル(サポートベクター回帰モデル)をトレーニングしました。
これに残りの種のパラメータを入力することで、野生の陸生哺乳類全体ののおおまかな質量を算出することができました。

ちなみに、今回算出できたのは合計4805種の野生の陸生哺乳類です。
全種(約6400種)には及びませんが、残りの種はそもそも質量が小さく、総質量への影響は無視できると判断されました。
そして同様にチームは、人間、野生の陸生哺乳類、野生の海洋哺乳類、家畜、それぞれの総質量を推定することに成功しました。