住宅ローンには三つの保険制度がある
住宅ローンには、義務、任意などの違いはあるにしても、大きく分けると、生命保険、火災保険、地震保険の三つの保険制度がある。住宅返済、家計に影響のない範囲で保険に加入して安心を買っておくのは、住宅ローン返済生活を無事に過ごすための最善の方法だ。
ただ、何でもかんでも加入すればいいというものではない。具体的にどうすればいいのかをシッカリと確認しておこう。失敗しない、賢い保険の選択方法とは?
民間では生命保険に加入できないと利用できない
民間ローンでは、ほとんどの金融機関で生命保険への加入が義務化されていて、生命保険に加入しない・加入できない場合には住宅ローンを利用できない仕組みだ。
これは、保険会社と銀行などが提携した団体信用生命保険(以下、団信)と呼ばれる制度、保険料は銀行などが負担し、利用者に万一の事態が発生して死亡したり、高度障害に陥ったりした場合には、その時点のローン残高相当の保険金が銀行などに支払われる。したがって、家族には住宅ローン返済の義務のないマイホームが残されることになる。
利用者からみれば、毎月の返済額のなかには保険料が含まれているので、別途保険料の支払いはないのだが、住宅ローンを借りるということは、その借入額相当の生命保険に加入するのと同じ意味がある。すでに多くの生命保険に加入している人なら、その既存の保険の一部を解約し、返戻金をマイホーム取得の頭金に充てる、あるいは一般の生命保険の保険料支払いが減る分を住宅ローン返済に回して、借入額を増やすなどの工夫があってもいいかもしれない。
生命保険に加入できない人向けのワイド団信も
この団信への加入には、一般の生命保険のように医師の診断の必要がないのも大きなメリット。これまでの健康状況などの自己申告でOK。ただ、持病や病歴などを隠していると、死亡時などにそれが発覚した場合には保険金が支払われないことになるので、正しい申告が不可欠だ。
そうすると、病歴などのために団信に加入できないというケースもあるだろうが、そんな人に関しては、「ワイド団信」と呼ばれる、より幅広い人が保険の対象になる制度を採用しているところもある。この場合には、通常の住宅ローン金利に0.3%程度の金利を上乗せしなければならないが、それでも、独自に生命保険に加入するよりは保険料は安くつくはずだ。
そもそも病歴などがあれば、簡単に生命保険に加入できないし、加入できたとしても保険料はかなり高くなってしまう。住宅ローンを利用して、ワイド団信で保険に加入するというのも、安心を買うためのひとつの方策になるだろう。
フラット35は団信に加入しなくてもOK
住宅金融支援機構が民間機関と提携して実施しているフラット35という住宅ローンがある。全期間固定金利型で完済までの金利が確定しているので、安心して利用できるメリットがあるが、やや金利が高いのが難点。
2018年6月現在、返済期間35年のフラット35の金利は1.37%だ。民間なら、これより安い金利の全期間固定金利型も一部にはある。たとえば、みずほ銀行の全期間固定金利型の35年間返済は1.33%だ。
しかし、フラット35では団信への加入が任意。この1.37%という金利は団信保険料を含んだもので、団信に加入しない場合には0.20%低い1.17%で利用できる。
すでに多くの生命保険に加入していて、団信は必要ないというのであれば、フラット35を団信なしで利用するのもひとつの考え方だろう
もちろん、フラット35には当初の金利が0.25%引き下げられる、「フラット35S」という制度があるので、合わせてそれも活用するべきだろう。その点に関しては、本連載の第5回の記事を参考にしていただきたい。
三大疾病保障特約がほとんどの機関で浸透
生命保険の団信の特約として、最近ではほとんどの金融機関が「三大疾病保障特約」を実施している。住宅ローン返済中に、がん、脳卒中、急性心筋梗塞と診断された場合、一定の免責期間の後に、保険金が支払われて、住宅ローン残高がゼロになる。
通常の団信の生命保険と異なり、がんなどと診断された段階で、亡くなっていなくても保険金が支払われるのが大きなメリット。一般のがん保険などは、がんと診断されたあとの治療費などがメインなので、それと合わせて加入していれば、がんと診断されても住宅ローン返済や治療費の心配なしで、治療に専念できるようになる。
最近では、三大疾病のほかに、四大生活習慣病などを加えた「七大疾病保障特約」など、保障の対象が広がりつつある。ただ、そうなると特約保険料がその分高くなる。
通常、この特約に加入するときには、金利に0.2%~0.35%程度の上乗せになる。保険料負担との兼ね合いで、どこまでの保障が必要なのかなどを検討しながら加入するのがいいだろう。
住宅ローン利用には火災保険の加入が必須
住宅ローンと関係が深い保険の二つ目は火災保険。原則的に火災保険に加入しなければ住宅ローンを利用できないことになっている。住宅ローン返済中に火災に遇ってマイホームがなくなった場合、住宅ローン利用者は新たに賃貸住宅などの住まいを求めなければならない。
住宅がなくなったとはいえ、住宅ローンの返済が続く上に新たに賃貸住宅の賃料負担がのしかかってくる。二重の負担になって、とても家計を維持していけなくなる可能性が高い――そうならないように、火災保険である程度カバー、生活を維持していけるようにするために加入が義務づけてられているわけだ。
保険料は、保険金額、保険期間などによって異なる。保険金額は再建築可能額が目処で、マンションのように堅固で火災に強いと考えられる建物ほど保険料は安く、反対に木造の一戸建てなどは高くなる。さらに、地域的に住宅密集地では保険料が高いといった違いもある。
さらに、保険期間によっても保険料が異なる。最長10年まで可能で、1年契約の火災保険料を1とすれば、5年契約の一括払いだと1年契約の4.30倍、10年契約だと8.20倍の保険料ですむ。つまり、10年契約にすれば、1年当たりの保険料負担は1年契約の82%で済む計算だ。
多少当初の負担が重くなっても、10年契約で負担を軽くするのが賢い選択だろう。
任意の地震保険にも加入しておくのが安心
この火災保険の特約として地震保険制度がある。地震の揺れによる倒壊、地震後の火災や津波による被害などは火災保険の補償対象にならない。別途、火災保険の特約として地震保険に加入しておかなければならないのだ。
損害保険料率算出機構によると、この地震保険の付帯率は2016年度の全国平均で62.1%。10年前の2006年度は41.7%だったから、この間、東日本大震災、熊本地震などの大きな被害が出たこともあって、年々着実に加入率が高まっている。
特に、地震の多い宮城県では86.4%に達している。また、南海トラフ地震などが想定されている高知県も84.8%と高いものの、長崎県のように45.0%と5割に達してない地域もある。これまでは地震とは無縁と考えられていたエリアでも突然大地震に襲われることがある。地震大国に住んでいる以上、地震保険に加入しておくのが安心というものだ。
地震保険に加入すれば所得から最大5万円控除
この地震保険には、「地震保険料控除」と呼ばれる所得控除制度がある。年間の地震保険料が5万円以下なら、年間保険料相当額が控除され、5万円超の保険料を支払っている場合には、5万円が所得から控除される。
所得税控除ではなく、所得控除なので最大では年間所得から5万円差し引いた上で所得税を算出することになる。課税所得が330万円超695万円以下で、所得税税率が20%の人であれば、5万円の20%、1万円所得税が少なくなるわけだ。
地震保険料控除については、火災保険に加入しているだけでは対象にならない。あくまでも火災保険の特約に加入して、火災保険料を支払っている人だけに限られるので注意しておきたい。
文・山下和之/ZUU online
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