資源回復の有効策は何か

さらに、放流の意味が非常に小さかったことを示唆する事例もあります。

世界三大漁場のひとつである三陸沿岸漁場では、名産であったヒラメの漁獲量について、長い間右肩下がりとなっていました。そのため稚魚の放流事業が行われてきたのですが、資源量の回復はなされえませんでした。

しかし東日本大震災がおき、しばらくの間放流事業が行えない時期がありました。そしてそれが明け再び漁が始まると、想定外の大豊漁となったのです。しかし漁業が再開されて数年経つと、再び減少傾向に陥ってしまい、現在に至ります。

ここから類推できるのは「放流の効果は薄いということ」「漁獲制限が最高の資源回復手段であること」の2点です。とくに後者について、日本以外の先進諸国では「魚が獲れなくなったら漁業制限を行って資源量を回復する」のが一般的であり、「放流で賄おうとする」ことはまずないようです。

それでもなお放流を行うというのは、わが国にあふれる悪しき前例踏襲主義のひとつといえ、日本の水産業界が思考停止に陥っていることの証明になってしまうのかもしれません。

人工的に孵化させたアユの稚魚放流が開始 実は環境汚染に繋がるリスクも

コイの放流が度々問題になるワケとは? 法令と実状のギャップも

身近な高級魚「キジハタ」の放流事業が実施 個体数は関東でも増化傾向

<脇本 哲朗/サカナ研究所>

The post 「魚は放流したら増える」は間違いの可能性 資源回復には漁獲制限が有効 first appeared on TSURINEWS.