食用二枚貝の代表ながら、各地で生産量が激減しているアサリ。そんな状況を打破する救世主となるかもしれない養殖方法が、いま各地で実施されはじめています。
(アイキャッチ画像提供:PhotoAC)
愛知の「垂下あさり」出荷が始まる
我が国で最もポピュラーな食用貝として知られるアサリ。そんなアサリの生産地のひとつである愛知県田原市で、今期も「ちょっと変わったアサリ」の出荷が始まりました。
そのアサリとは、田原市のブランドともなっている「渥美垂下あさり」です。このアサリはその名前の通り、海中にぶら下げたかごのなかで養殖されています。
現在、国産アサリは熊本県における偽装問題などの影響で価格の高騰が続いています。その中でも「渥美垂下あさり」は値段をあげることなく販売を続ける予定だそうです。
実は各地にある「垂下養殖アサリ」
さて、このような「垂下養殖」スタイルのアサリは、実は各地に存在しています。首都圏では、東京湾に面する千葉県木更津において「つりアサリ」というブランドで漁業権が指定されています。
ほかにも、有明海に面した長崎県小長井では「垂下式ゆりかごアサリ」というブランドが生産されています。そのほか、北海道の函館湾でもまだブランドになってはいませんが、アサリの垂下養殖についての研究・検証が進んでいるといいます。
スタンダードになる可能性も
これらの垂下養殖アサリの産地には、とある共通点があります。それは「いずれも、かつて天然アサリの一大産地であったというもの。天然アサリの生産数が減少してしまい、起死回生の策として導入した垂下養殖が功を奏しています。
アサリは現在全国的に大きくその数を減らしているのですが、その要因のひとつとして、エイやクロダイなどの魚による「食害」が挙げられています。
垂下養殖はプラスチック製の丈夫なかごの中で育てるので、捕食しようとする魚からアサリを守ることができます。加えて垂下養殖は海底ではなく海水中にアサリを置くかたちになるため、アサリに当たる海水の量が多くなり、結果として餌のプランクトンを多く得られ、身が大きく太り、食味もよくなるのだと言います。
現在、全国的にアサリ生産量は右肩下がりとなっています。そのため今後も、アサリの生産現場に垂下養殖法が導入される地域は増えていくのではないかと思います。
<脇本 哲朗/サカナ研究所>
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