
Lowinger Watches(ローウィンガー・ウォッチ)は、ドイツの東の端にあるザクセン州のケムニッツを拠点とする日本未上陸のマイクロウオッチブランド。 2014年にデビッド・ローウィンガーにより創設されたこのブランドは、時計愛好家のために一点物の腕時計をデザイン、製造している。

近年、独立系ブランドの創設が活発化している時計界だが、濫立する独立系時計ブランドのなかでもローウィンガーの特殊性は特別に際立っている。まず、創業者であるデビッド・ローウィンガーの来歴が面白い。彼の本業は不動産投資アナリストであり、実は時計専門学校で学んだことも、時計メーカーで働いた経験もない。ジョージ・ダニエルズ博士の名著”WATCHMAKING”を片手に、独学で時計のメカニズムと製造技術を習得した時計職人なのだ。
「英国に住んでいたある日、どこからともなく腕時計の素晴らしいアイデアを思いつきました。それまで機械式腕時計を見たことがなかったので、それがどのように機能するか知らなかったので、これは奇妙な体験でした」
彼のコメントを信じるならば、機械式時計に関する知識がまったくない状態でブランド創設のインスピレーションを得たデビッドは、2014年から本格的に時計作りの工程と技術を学びはじめ、4年の歳月でCADによるデザインや設計、旋盤加工やフライス加工による製造技術を習得。18年にファーストモデルである“シリーズ・ワン”を発表し、時計ブランドとしてデビューを飾ったことになる。

独学で時計作りを学んで自身のブランドを創設した、という時点でほかのブランドにはないストーリーと魅力を備えているのだが、ローウィンガーの付加価値をさらに高めるポイントとなっているのが、ケース、文字盤、針など、外装パーツに加えて、ムーヴメントを含めたコンポーネントを、デビッド自身が手動のフライス盤と旋盤によって製造しているという点だろう。
ファーストコレクションのシリーズ・ワン(現在は完売)では、ユニタス6498-2の構造をベースにした自社製キャリバーを開発しており、脱進機などの一部パーツを除き、メインプレート、ブリッジ、巻き上げクリック、歯車、筒カナなど、重要な部品の自社製造を実現。公式サイトにシリーズ・ワンの画像がないため、海外の時計情報サイトで確認してもらうしかないが、細部に仕上げの荒さが見られるものの、良い意味での無骨さを備えた意匠が魅力的だ。

2018年にファーストコレクションを発表して以降も、ローウィンガーは意欲的にコレクションを拡充しており、現在は汎用ムーヴメントを採用した比較的な手頃なモデルもラインナップに加えられている。今回は、デビッド・ローウィンガーの今後の活躍に期待しつつ、独特の感性とこだわりを盛り込んだ四つのモデルを紹介していこう。
Lowinger Watches(ローウィンガー・ウォッチ)
ブルー・メイズ

ケースは40mm、厚さ10.7mmのステンレススチール製で、ARコーティングを施したフラットサファイアクリスタル風防を使用。表面に薄い酸化皮膜(無色透明)を生成させ、ライトブルーに仕上げた陽極酸化チタン文字盤の外周にはチャプターリングが設置され、手動のフライス盤で時と分を表す目盛りを刻印。手作業で施された迷路のような装飾も印象的だ。

ハンドメイドの時針と分針にはシザーシェイプを採用し、精緻で高品質なクラフトマンシップを表現している。50本の限定生産。ムーヴメントにETAの Cal.2824-2を採用することでコストを抑え、手頃な1490ユーロ(約21万4560円)に価格を抑えることに成功している。
Lowinger Watches(ローウィンガー・ウォッチ)
シリーズ・ツー

レギュレーター機構とレクタンギュラーケースを組み合わせたローウィンガーのセカンドコレクション。ETAのCal.6498-2をベースにしつつ設計に大幅なアレンジを加えた自社製の手巻きムーブメントを搭載し、12時位置のサブダイアルで時間、6時位置のサブダイアルで分を表示している。

このモデルはムーヴメント、外装を含めてほとんどのパーツをデビッドが手動フライス盤と旋盤を使って製作しており、 文字盤は部品が異なる高さに配置され、立体的な外観を呈している。文字盤とブリッジはジャーマンシルバー製。文字盤の表面には手作業で約 3万回に及ぶハンマー打ちを施し、粒状の装飾を施した。ケースサイズは縦44mm、横28mm、厚さ10mm。ステンレススチールケースにARコーティングを施したフラットサファイアガラス風貌を装備。裏ブタから手作業で製作した手巻きムーヴメントの造形を見ることができる。価格は18500ユーロ(約266万4000円)。
Lowinger Watches(ローウィンガー・ウォッチ)
UFO

リューズを12時位置に設置し、6時位置のディスク式ジャンピングアワーで時間を表示するローウィンガーの新作モデル。その名前の通り、宇宙船をイメージした個性的なデザインが特徴となっており、『スターウオーズ』に登場するハンソロの相棒、ミレニアム ファルコンを思わせる造形がマニア心をくすぐる。

この時計にはジャガー・ルクルトのヴィンテージムーヴメント、Cal.818をベースにした手巻きのムーヴメントが搭載されており、自社製のジャンピンクアワーモジュールを組み合わせることで、独創的な表示機構を備えた時計に仕上げられている。ケースは38mmで、厚さ7.9mm。価格は未定。
Lowinger Watches(ローウィンガー・ウォッチ)
デジタル・ワン

洗練されたツールウオッチのような外観と、斬新でユニークな文字盤デザインが目を引く新作モデル。ディスク数字に立体感があり未来的な雰囲気を醸し出している。陽極酸化チタン製の文字盤の外周に秒目盛り(中央の秒針で表示)、カットアウトした文字盤の外側で時間、内側で分を回転ディスクで表示。9時位置から伸びている水平に伸びたマーカーで現在時刻を確認する使用だ。

ケースサイズは40mm、厚さ10.7mmのステンレススチール製で、ARコーティングを施したフラットサファイアガラス風防を装備。 ムーヴメントはソプロードのニュートン P092を搭載。価格は未定。
文◎William Hunnicutt
時計ブランド、アクセサリーブランドの輸入代理店を務めるスフィアブランディング代表。インポーターとして独自のセレクトで、ハマる人にはハマるプロダクトを日本に展開するほか、音楽をテーマにしたアパレルブランド、STEREO8のプロデューサーも務める。家ではネコのゴハン担当でもある。
提供元・Watch LIFE NEWS
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