オール・インワンで腫瘍の切除と生体材料のプリントを同時にこなす

生体材料を臓器に直接プリントすることに成功。細胞は1週間で4倍に増殖した。
Credit:Thanh Nho Do(UNSW)et al., Advanced Science(2023)

研究チームは、F3DBを用いて豚の肝臓の表面に様々な形状と材料で3Dプリントすることに成功しました。

そして印刷後の細胞生存率をテストしたところ、その大部分は印刷直後でも生存できると判明。

それら細胞は増殖を続け、印刷後1週間で4倍の細胞が観察されました。

現段階では複雑な組織を構築できるわけではありませんが、臓器の治癒を助けることは可能でしょう。

次にチームはF3DBが「オールインワンの内視鏡手術ツール」として利用できるか確かめました。

肛門からアームを挿入して大腸がんを切除。生体材料をプリントして治癒を早める
Credit:UNSW Community(Youtube)_F3DB bioprinter(2023)

彼らは豚の腸を使って、「大腸がんの除去」を想定したテストに成功しました。

大腸がんはがんの中でも3番目に死亡する人が多い病気ですが、早期切除によって5年間の生存率が90%以上も向上すると言われています。

F3DBを使うなら、手術における患者の負担を大きく低減させられます。

まず、F3DBのノズルを電気メスとして使用し、がん病変に印をつけた後切除できます。

F3DBなら、切除・洗浄・プリントすべてが可能
Credit:UNSW Community(Youtube)_F3DB all-in-one endoscopic surgical tool(2023)

またノズルから水を流して、血液や余分な組織を洗浄することも可能。

さらに生体材料を直接プリントすることで、治癒を促進できるのです。

研究チームは、今回のテストにより、F3DBが様々な用途に利用できることを実証しました。

彼らは次の段階として、実際に生きている動物の体内にF3DBを挿入してその有効性をテストする予定です。

この技術は順調に開発が進めば、5~7年以内に実用化できると考えられています。

参考文献
3D bioprinting inside the human body could be possible thanks to new soft robot

元論文
Advanced Soft Robotic System for In Situ 3D Bioprinting and Endoscopic Surgery