大手GMSや百貨店は、PLMを入れても投資回収できる理由
まとめよう。
今、アパレル産業の大きな課題はサプライチェーンである。一つはPLM。これはもはや修復不可能になっており、多くの企業は償却すべきだ。改めて問うが、「業界横断のサプライチェーンを作りたいのか」「個別企業の生産性を上げたいのか」を明らかにし、もし、後者ならRPAで実現可能だ。そもそも私が言っていることの意味が分からない人は、今すぐ辞めるべきだ。
一方、アパレル以外の百貨店やGMSがPLMを導入し、BOM機能を使わずに、単に製品マスターとしてグループ間で使っているケースもある。この場合、PLMが最適なソリューションだとは思わないものの、ROIは成立するだろう。なぜなら、屋台骨が1兆円、2兆円という大手企業だからだ。
次に、人の問題。DX成功の鍵はトップのコミットとはよく言われる話だが、正確に言えば「反対勢力の押さえつけ」である。私は、冒頭に上げた事件ではトップからハシゴを外された。また、ある紡績企業では、何度も忠告したにも関わらず、また、早く対応しなければ損失は膨大になるため、半ば強引にクライアントを引っ張った結果、これもハシゴを外された。しかし、今では予想通り、業績悪化が止まらなくなっている。これらはすべて人災であり多少の荒療治が必用なフェーズに斧が振れず、改革半ばでプロジェクトが崩壊するケースだ。
私は、日本で最初のターンアラウンドスペシャリストである三枝匡氏と話したことがある。彼は「そんな座組なら最初から手を出すな」と私に言った。どんな名医でも自分の腹を切ることはできないように、手術は必ず第三者が必要なのである。
プロフィール
河合 拓(経営コンサルタント)
ビジネスモデル改革、ブランド再生、DXなどから企業買収、政府への産業政策提言などアジアと日本で幅広く活躍。Arthur D Little, Kurt Salmon US inc, Accenture stratgy, 日本IBMのパートナーなど、世界企業のマネジメントを歴任。2020年に独立。大手通販 (株)スクロール(東証一部上場)の社外取締役 (2016年5月まで)
デジタルSPA、Tokyo city showroom 戦略など斬新な戦略コンセプトを産業界へ提言

文・河合 拓/提供元・DCSオンライン
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