転機になった有料オプション開始

食べログが特定の業態や店舗の評価が下がるようにアルゴリズムを設定しているという話は、以前から飲食業界のなかではいわれてきました。ただし、食べログに対して、あまり好意的でない飲食店のほうが多いので、「クレームを書きたがる素人さんやライバル店による書き込みをベースに不当な評価をしているのでは?」「お金を払って有料会員になれば点数が上がるのでは?」(=お金を払っていない店の評価は低くなる)といった感情的・憶測的なものが中心でした。

私は食べログ初期の頃からその実態や、飲食店側の食べログ活用方法を調査研究してきましたが、食べログ側は商売の根幹となる点数付けをかなり慎重に行っていますし、改善もしてきたように思います。一例として、初期の頃は書き込みが数件しかなくても3.8くらいの点数がついていて、なぜそんなに高評価になるのか疑問を感じることもありましたが、最近はある程度の書き込み件数がないと高評価にならないようになっています。また、書き込みする人の、過去の他店への書き込み件数が少ない場合やフォロワーが少ない場合は評価に含めない、つまりあまり考慮しないことにより、ライバル店や単なるクレーマー、自店のスタッフなどによる書き込みの影響力を無効化したり、お金をもらって書き込みをしているグループを見つけると、その人たちの書き込みを無効化するといった巡回パトロールも行ってきました。これらによって、ある日突然、飲食店の評価点数が下がることもあります。

そうはいっても、長年見ていると「グレーだな」と思うこともありました。評価基準が公表されていないアリゴリズムですので、今回のように特定のチェーン店の評価を「食べログの意思」で下がるような操作もできてしまいます。食べログからすると、手間暇かけている個人店や高級店を上位にしたかったのかもしれませんし、多くの人が利用するチェーン店や安いお店が手軽さや安いことを理由に評価が上がって上位にくることは、食べログの本意ではなかったのかもしれません。ただし、その場合は「食べた人・書き込み者・一般の人が決めた点数」ではなく、「これらの人々の評価を加味しながら食べログが決めた点数」となるでしょう。

そして過去、一番グレーだなと思ったのが、食べログの有料オプションができたときです。当時、多くの店舗に「有料オプションをつけませんか? 有料になると食べログに広告打てますし、店舗の情報をより詳しく公開することができます」と営業担当者が回ってきました。有料オプションをつけたからといって店舗の点数が上がるわけではないということでしたが、成績を上げたい営業担当者や言葉足らずの営業担当者のせいで「お金で点数が上がる」と思い込んだ飲食店もありました。

ちなみに営業担当者たちからは興味深い話を聞けました。「点数が低いお店に行くと怒られるんですよ。『お前のところのせいで客が来ないじゃないか! そんなところに金は払わない!』と帰されてしまう。逆に点数高いところに行くと、『食べログさん、ありがとう! あなたたちのおかげでお客さんがいっぱい来ています。だから有料版をやらなくても大丈夫です』と帰されてしまう」。このような話を聞くようになったあと、食べログの点数の幅が「無難」になってきた気がしました。点数が3.50付近に寄っているお店が増え、どんぐりの背比べ状態をつくり出すことによって『有料オプションを使って目立たせませんか』と言いやすくしているのではと疑うようにもなりました。こうした疑いも、食べログの評価基準(アリゴリズム)がブラックボックスがゆえに生まれるのだと思います。

そう考えると、チェーン店は小さな個人店に比べて広告費を持っていることが多いので、点数をある程度のところで頭打ちにさせて『広告で目立たせませんか』と営業しやすいようにしているのではと勘繰られてもおかしくありません。

飲食店側に認められない「掲載されない権利」

そうはいっても食べログによる点数や広告の効果は絶大です。今回のチェーン店もその効果が大きすぎるがゆえに訴訟を起こしています。ですので、飲食店は日ごろから食べログの有料オプションを活用したり、最近主流のネット予約サービスを活用したりしています。書き込みについては、飲食店側からすると、自分たちのことをネット上でけなされたりすることは気持ちいいものではありませんが、どうすることもできないので静観しています。ですが、目に余る書き込みについては食べログに通報、相談しています。昔に比べると食べログのほうも、書き込みの取り下げ・差し戻しなど柔軟な対応をしていると思います。半面、書き込んだ側の反感を買ったりもしていますが。

また、飲食店側が「うちは載せてほしくない」となった場合、掲載を辞退する権利が飲食店側にあってもいいのになと個人的には思います。実際に「うちの店は食べログに掲載しないでくれ」と食べログに訴訟を起こしたお店もありますが、裁判では負けてしまい、掲載を取り下げてくれない状況です。この「強制的に掲載され、強制的に評価されてしまう」というのが、飲食店側からすれば問題なのでしょう。

しかし、そうであるなら飲食店の原点に返って「目の前のお客さんに楽しんでもらう」ことに専念するしかないと思います。お客さんを楽しませるということは、美味しい料理やお酒、サービス、雰囲気トータルのものです。目の前のお客さんが食べログで書き込みをしている人かどうかは分かりませんので、まさに一人ひとりが勝負です。「たまたま」失敗した料理が出てしまった、「たまたま」待たせてしまったといっても、お客さんにとっては、その目の前の料理がすべてです。一定のスピードで一定のレベルの料理を出し続けることができるのがプロ。食べログのことは意識しすぎず、原点に立ち返る姿勢と行動が、食べログの点数が上がる結果になるのだと思います。

(文=Business Journal編集部、協力=江間正和/東京未来倶楽部(株)代表)

提供元・Business Journal

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