投資信託も他の金融商品と同様に、利益が出た場合、税金を支払う必要がある。その具体的なケースや確定申告を行う必要性について、順を追って見ていこう。

投資信託で税金が発生するタイミングは?

金融商品への投資において、税金が発生するのは、利益が確定したタイミングである。これは投資信託でも例外ではない。投資信託で利益が確定するのはどのような時だろう。

1つ目は分配金が支払われるタイミングである。投資信託の分配金は個別元本(投資信託購入金額)によって、利益となる普通分配金と元本の払い戻しとなる特別分配金に分けられる。税金は利益に対して発生するので、普通分配金のみ課税対象となる。

2つ目は実際に売却益が出たタイミングである。投資信託の売却時の価格が取得単価(個別元本+手数料)を上回っている場合、その差額は売却益として課税対象となる。

3つ目は投資信託が満期を迎える等で償還されるタイミングである。こちらも、売却益の場合と同様、償還時の単価が取得単価を上回っている場合、その差額(償還益)に課税されることとなる。

投資信託で利益が発生するのは、これら3つのタイミングである。それぞれどのように課税されるかを理解しておく必要があろう。

株式投資信託と公社債投資信託

税金の話を進める前に、投資信託には2つの種類があることを整理しておこう。株式投資信託と公社債投資信託である。

まずは株式投資信託であるが、約款上で株式を組み入れることができるようになっているものは全てこちらに分類される。株式を組み入れているものはもちろん、現状で株式を組み入れていなくても、約款上で株式の組み入れが認められているものは株式投資信託となる。債券を中心とした投資信託であっても、分類上、株式投資信託となる商品も多くある。

一方、公社債投資信託は、約款上で株式の組み入れが認められておらず、公社債やCP(コマーシャルペーパー)等で運用されるものを指す。

株式投資信託と公社債投資信託では、税金の取り扱いが異なるため、自身の保有する投資信託がどちらに分類されるのかを、約款等で確認しておく必要がある。

次に、それぞれの税金や確定申告の必要性について説明していこう。なお、今回は株式投資信託、公社債投資信託ともに、公募型のものについての説明となる。

株式投資信託の売却益、償還益への課税

株式投資信託の売却益や償還益の課税については、上場株式の譲渡益と同様の扱いとなる。所得税15%、住民税5%に、2037年末までは復興特別所得税の0.315%が加算され、合計で20.315%の申告分離課税が適用される。

株式投資信託の売却益や償還益は、原則として確定申告が必要である。ただし源泉徴収ありの特定口座で取引を行っている場合、特定口座内で課税手続きは終了するため、確定申告は不要となる。

株式投資信託の分配金への課税

株式投資信託の分配金への課税は、上場株式の配当金と同様の課税体系となっており、税率は売却益への課税と等しく、20.315%である。

分配金については、支払時に源泉徴収による課税が行われるため、確定申告は不要である、ただし、次のケースでは確定申告を行うことで有利となる場合もある。

1つ目は上場株式や投資信託等の譲渡損失等と損益通算を行うケースである。他の金融機関での取引分や、一般口座等との通算を行うことで、利益分に掛かる課税額を減らすことができる。この場合、確定申告で申告分離課税を選択する必要がある。

2つ目は配当控除を活用するケースである、株式投資信託の分配金への課税は、上場株式の配当金と同様に配当所得に分類されるため、確定申告時に総合課税を選択することで配当控除を活用することができる。

この2つのケースについては後述する。

公社債投資信託の売却益、償還益への課税

公社債投資信託の課税については、2016年1月より、金融所得課税の一体化を受けて大幅な見直しが行われている。

従来、公社債投資信託の売却益や償還益については、利子所得として20.315%の源泉分離課税が適用されていた。これらは確定申告で他の利益と損益通算することは不可となっており、譲渡損についても、なかったものと見なされていた。

しかし、2016年の金融所得課税の一体化を受け、先述した株式投資信託と同様の取り扱いとなった。売却益や償還益は20.315%の申告分離課税となり、原則として確定申告が必要だ。譲渡損失が出た場合には、上場株式等の配当や売却益との損益通算も可能となっている。

また、公社債投資信託も特定口座での取引が可能となったため、源泉徴収ありの特定口座で取引を行えば特定口座内で課税手続きを完了させ、申告不要とすることもできる。

公社債投資信託の分配金への課税

公社債投資信託の分配金への課税についても、金融所得課税の一体化を受けた見直しが行われている。

従来は利子所得として20.315%の源泉分離課税となり、確定申告はできないこととなっていたが、こちらも確定申告による申告分離課税の適用が可能となった。上場株式等の配当や売却益との損益通算も可能だ。

ただし、分配金については、株式投資信託の分配金と異なり、総合課税による配当控除の適用は不可となっている。利子所得と見なされるためである。

分配金は申告不要、売却益、償還益は申告必要

ここまでのまとめとして、公募投資信託では、株式投資信託、公社債投資信託ともに、課税における確定申告の必要性の有無は次のようになる。

分配金は支払時に源泉徴収されるため、申告不要である。ただし、申告した方がお得になることもある。これについては次項以降で触れる。

売却益、償還益は申告分離課税のため、申告が必要となる。なお、金融所得課税の一体化を受け、公社債投資信託も特定口座の対象となったため、源泉徴収ありの特定口座を選択していれば、投資信託における課税を確定申告なしで行うことも可能である。当然ながら、源泉徴収なしの特定口座や一般口座での購入を行う場合には、売却益、償還益の確定申告を忘れずに行う必要がある。

源泉徴収あり特定口座でも確定申告を行うべきケース

源泉徴収ありの特定口座を選択していれば、株式投資信託、公社債投資信託ともに確定申告を行う義務はない。ただ、状況によっては、確定申告を行った方が良いケースもある。そのパターンを理解し、自身の状況と照らし合わせることが重要だ。

最も可能性が高いのは、複数の金融機関に跨いだ損益を通算するケースだろう。特定口座はそれぞれの金融機関ごとの口座内で損益を通算するため、金融機関を跨いだ損益通算を行うには、確定申告を行う必要がある。A証券での利益とB証券での損失を通算するといった場合である。

源泉徴収あり特定口座の場合、それぞれの金融機関ごとに「特定口座年間取引報告書」が発行されるため、確定申告ではその報告書に基づいて損益通算の計算を行う。

売却損の繰り越しを行う場合も確定申告を

売却損が出たが、その年に損益通算しきれなかった分については、その損失を繰り越し、翌年以降3年の間、課税対象となる売却益から差し引くことが可能である。この「譲渡損失の繰越控除」を活用する場合にも、確定申告が必要となる。これにより、複数年で税金を適正化する効果がある。

なお、この制度の活用には、売却損が出た年の確定申告が必要な上、翌年以降、損益通算をしない年も含めて、確定申告を行う必要がある。

源泉徴収ありの特定口座で投資信託を購入している場合でも、売却損が大きく出た年は確定申告を行い、翌年以降に損失繰り越しを行うようにしたい。

株式投資信託は総合課税で配当控除の活用も可

株式投資信託の分配金は、上場株式の配当金と同様の課税体系となるため、総合課税として配当控除を受けることも可能である。もちろん、この場合には確定申告を行う必要がある。

総合課税となる場合、20.315%という固定税率ではなく、自分の所得に合わせた累進課税となるほか、所得によって控除が受けられるため、節税が可能となるケースもある。自身の所得額に加え、他の譲渡損益等の状況等により一概に節税可能とは言えないが、選択肢として頭に入れておきたい。

配当控除の活用で注意すべき点は、全ての株式投資信託の分配金が配当控除の対象となるわけではないという点である。株式投資信託は株式を組み入れることが可能な投資信託のことを指すが、その中でも、約款で定める株式の組入比率が25%以上、外貨建て資産の割合が75%以下である株式投資信託のみが配当控除の対象となる。また、それらの比率によって、控除率も異なってくる。

配当控除を活用する場合、これらの制度を正確に把握し、総合課税で申告することのメリットを慎重に検討すべきであろう。

投資信託の税制は、株式投資信託と公社債投資信託に分かれるが、金融所得課税の一体化を受け、非常に分かりやすい制度となった。また、源泉徴収ありの特定口座を活用すれば、確定申告の必要もなくなる。

分配金に掛かる税金と、売却益、償還益に掛かる税金をそれぞれ把握した上で、自身の確定申告の必要性や、申告することによるメリットを総合的に判断できるように心掛けたい。

文・ZUU online編集部

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