ブラックホールの新たな側面が示されました。
米国のハワイ大学(University of Hawaii)で行われた2つの研究によって、暗黒エネルギーが銀河中心にある超大質量ブラックホールに詰め込まれている可能性を示唆する、初めての観測データが示されました。
宇宙を膨張させた「暗黒エネルギー」はブラックホール内に溜まっているかもしれないというのです。
一部の理論家たちはデータ解釈について懐疑的な立場をとっていますが、今回の研究が正しい場合、ブラックホールの「中身」や暗黒エネルギーについて大きく理解が進むことになるでしょう。
しかし、観測できないブラックホールの内部に、観測できない暗黒エネルギーが存在するとの結論を、研究者たちはいかにして導き出したのでしょうか?
研究内容を報じる1つ目の論文は2023年2月2日に『The Astrophysical Journal』、2つ目の論文は2023年2月15日に『The Astrophysical Journal Letters』にて公開されています。
ブラックホールに暗黒エネルギーが蓄積されるという最初の観測的証拠が見つかる!
誰もが知る通り宇宙はビッグバンという爆発によってまるで風船のように大きく膨張して始まりました。
そうなると、ある疑問が浮かんできます。今後宇宙は膨張に向かうのでしょうか? それとも収縮に向かうのでしょうか?
収縮する場合、その主要な源は重力であると考えられます。
重力が十分に大きい場合、宇宙はやがて「ビッグクランチ」を起こし、全てが1点に収縮され押し潰されて終焉を迎えると考えられます。
宇宙には当然数多くの天体が存在し、そのすべてが重力をもっています。ならば宇宙は収縮に向かうと考えるのが自然でしょう。
ところが観測の結果によると、宇宙は収縮に向かうどころか、加速して膨張しているというのです。
では数多の天体の重力を押しのけて、宇宙を加速膨張させている力とは一体なんなのでしょう?
それが暗黒エネルギー(ダークエネルギー)と呼ばれる力です。ここでいう暗黒というのは、未知のエネルギーという意味を指しています。
宇宙を膨張させる未知のエネルギー「ダークエネルギー」とは何かわかりやすく解説
この暗黒エネルギーが強すぎれば、宇宙はやがて星も原子も何もかもがバラバラに裂けてしまう「ビッグリップ」と呼ばれる終焉を迎えると考えられています。
宇宙の終焉がどのような形で訪れるかは現時点では不明です。
ですが観測事実と照らし合わせると、現在宇宙には重力に反して宇宙を膨張させる斥力「暗黒エネルギー」がかなりの量存在していると考えられるのです。
ただ、この暗黒エネルギーが実際なんであるのか? どこから発生しているのか? は全くの謎に包まれています。
しかし今月になって発表された2つの研究が、巨大な重力発生源であるブラックホールの内部に、暗黒エネルギーが溜まっている可能性を示したのです。
新たな研究では、ブラックホールと暗黒エネルギーをどのように結びつけたのでしょうか?