かつては一部で総理候補とも取り沙汰された“女傑”が最近、すっかり存在感をなくしている。

経済安全保障担当大臣などを務める高市早苗衆議院議員の名前は、めっきり永田町で聞く機会が減少した。高市大臣といえば、当選9回を誇り自民党総裁選にも出馬するなど、故・安倍晋三元首相の秘蔵っ子ともいわれていた。だが、後ろ盾をなくした今、党内での評判は著しく低迷しているのだ。安倍派に所属する自民党の中堅議員は、次のように説明する。

「高市大臣は、今では党内で誰にも相手にされていませんよ。もともと稲田朋美議員と同じく、安倍晋三元首相から寵愛を受け、今のポジションを確立した。そのため、経済安全保障などの重職を担ってきましたが、いかんせん対話力に乏しく仕事ができない。その一方で、メディア出演は好きで、SNSなどでも積極的に情報を発信する。一部の議員は『高市劇場』と揶揄するほどです。あの人は、一度“こうだ”と思い込んだら、本当に人の話を聞かないから、やっかいなんです。石破茂議員と同じく、世間からの見られ方と、永田町での見られ方がこれほど異なる代議士も珍しいですよ」

そんな高市大臣には、地元・奈良からも厳しい声が聞こえてきている。それは、4月に予定される奈良県知事選挙に伴う“内輪揉め”が顕在化しているからだ。奈良県知事選挙には、4選で現職の荒井正吾知事、日本維新の会から推薦を受けた山下真氏、そして高市氏の元秘書であり元総務官僚の平木省氏が自民党県連の推薦を受け、主に3者で知事選を争う予定だ。だが、その選考プロセスに大きな問題があった、と奈良県連の関係者が嘆息する。

「高市さんは、自分の子飼いの平木氏を当選させることで自身の存在感を強めたいという明確な狙いがあったのでしょう。そこで高市陣営が独自調査を行い、その結果を受けて、現職の荒井さんに対し『維新に勝つには、あんたじゃ無理だ』と高圧的に言い放ち、大揉めしたそうです。これに激怒した荒井知事は二階俊博議員、森山裕議員ら、党の重鎮と面会し、高市さんに対してクレームを出した。意固地になった荒井さんは、年明けに知事選出馬を表明した形です」

現在の構図は、荒井氏と山下氏が無所属、平木氏が自民党から出馬を予定しており、平木氏有利との見方が強い。しかし、その構図が激変するだけの“爆弾”もあるというのだ。その発信源は、高市氏の独断で行われた調査だという。

「平木氏の推薦を求める際の高市陣営の調査が、そもそもデタラメだったという話も出ています。それはすでに党本部の耳にも入っており、処遇を検討しているという噂も流れています。そもそも、保守分裂の原因をつくったのも、火をつけたのも高市さん。はっきり言って、高市さんの一挙手一投足に奈良が迷惑している状況です。平木さんが優秀な人材だけに、禍根を残しそうな進め方が非常にもったいない。平木さん本人も、高市さんのゴリ押しで、政局のコマとして使われている現状に複雑な心境でしょう」

では、なぜ高市氏は地元でそんな暴挙を犯しているのか。その理由は、党内での立ち位置に変化が生まれているからではないか、と前出の自民党中堅議員は分析する。

「岸田文雄首相が、高市大臣のことを毛嫌いしていることは間違いない。引き金となったのは、入閣の打診を固辞し、『つらい』と発言しながらも結果的に引き受けたというパフォーマンス。その後も、政調会長を外された不満をたびたび口にしていましたから、そういった態度に相当怒りを覚えていると耳にします。

さらにLGBT法案や増税など、事あるごとに岸田首相の意にそぐわないスタンスをとっていることもあり、次回の人事では主要ポストを外されるのではないかとも囁かれています。そんな状況が面白くないのは当然で、自分が安倍派の中心だというアピールをしたいのでしょう。奈良でのドタバタも、そんな高市さんの意図が透けて見え、安倍派の議員も嘲笑していますよ」

通る道先々でハレーションを引き起こす高市氏は、果たしてどこに向かおうとしているのだろうか。

(文=Business Journal編集部)

提供元・Business Journal

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