その斬新で独特な表現手法が「ネオ漫画」と称され、日本国内のみならず世界から注目を集めている稀代の漫画家・横山裕一(よこやま・ゆういち)氏。

同氏の作品は各国で翻訳版が出版され、ヨーロッパやアメリカ、ロシアの人にも人気だ。新作を待ち望むファンが多い同氏の、古典和歌を題材に描かれた新刊『ネオ万葉』が3月24日(金)に刊行される。

流れるように時間が描かれる横山裕一氏の作品

武蔵野美術大学で油絵科を卒業した横山氏は、「時間を表現できる」という特性にひかれ、2000年以降、漫画に活動領域を広げる。

疾走感のある描線やオノマトペ、性別も国籍も超えたキャラクターたちが唯一無二の世界を作り出す。その強烈な漫画表現は、言葉の壁を軽々と越える。

『ニュー土木』『トラベル』『NIWA』『ベビーブーム』『世界地図の間(ま)』など多くの著書がフランス、アメリカ、イタリア、スペイン、ロシアなどの国で翻訳・出版され、高い評価を得ている。

2010年には神奈川県の川崎市民ミュージアムで初の大規模個展「横山裕一ネオ漫画の全記録:『わたしは時間を描いている』」を開催。

パリのパレ・ド・トーキョーやチューリッヒのハウス・コンストルクティヴ美術館でも展覧会を実現。2021年には広島現代美術館でのプロジェクト『「実施しろ」「何をだ」』を成功させた。

173首の古典和歌を題材にした『ネオ万葉』

今回刊行される書籍『ネオ万葉』の題材となったのは、『万葉集』ほか『古今和歌集』などから集めた173首の古典和歌だ。

収録作品は「萩」「田子の浦」「鳥総(とぶさ)」「宝玉(ほうぎょく)」「寝室」「ふくろ」「GATE」「円(まと)」「翁」「おきまろ」「野守」「装束1」「装束2」「装束3」「八十島(やそしま)」「月下」「楫(かじ)」「滝」「王族」「カツマタ湖」「ハコヤ山」「花鳥」の22作品。

よく知られた日本の古典をモチーフにしながらも、横山氏による独自の新解釈が圧倒的なビジュアルで迫ってくる。

奇妙で奇抜ながらもなぜか目が離せない、珠玉のアートブックのような一冊だ。

刊行直前記念エキシビション開催中

現在、刊行直前記念エキシビション「“N万はまもなく 完成である”」を東京・渋谷の「MONSTER ATTACK TOKYO(MAT)」で開催している。

期間は2月26日(日)までで、時間は13:00~19:00(最終日18:30まで)。会期は残りわずかだが、もし幸運にも都合がつくなら訪れてみたい。本書の発売を前にした、興奮や期待を共有できるだろう。

『ネオ万葉』
発売日:3月24日(金)
著者:横山裕一
仕様:B5判、ソフトカバー、264ページ
価格:2,700円(税別)
ISBN:978-4-7562-5727-7 C0079

(SAYA)

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