寒さが緩むこの時期、各地から「シロウオ解禁」の便りが届きます。踊り食いで人気の魚ですが、このシロウオについてネット上では未だに「勘違いによる風評被害」を広げかねない発言が多く見受けられます。
(アイキャッチ画像提供:PhotoAC)
各地でシロウオ漁が実施
愛媛県の南部にある宇和島市津島町で、伝統のシロウオ漁がピークを迎えています。
同町内を流れる岩松川の河口付近では、毎年この時期、産卵のためにやってくるシロウオが漁獲されており、春の訪れを告げる風物詩として親しまれています。
また、豊予海峡を挟んで対岸にある大分県佐伯市の番匠川でも、今月1日にシロウオ漁が解禁されました。同じ吸収では佐賀県唐津市の玉島川、熊本県天草市でも漁がスタートしています。
今後暖かくなるにつれ、徐々に北の地でもシロウオ漁が始まっていく見通しです。
春の訪れを告げるシロウオ
シロウオはハゼの一種の魚で、大きさは5cm程度とハゼ類の中でも小型です。体色は透明で、体側に黒い点が並ぶなど、他のハゼとは形態が大きく異なるのが特徴です。
シロウオは海水生の魚ですが、毎年早春になると産卵のために川を遡る習性があります。そのためこの時期になると、各地の河口周辺で四手網や”やな”などを使って漁獲されます。
味は淡白な中に強い旨味があり、骨も柔らかく食べやすい魚です。様々な料理で賞味され珍重されますが、鮮度落ちが早いため生きたままでしか流通できないことから、早春の味としておもに産地周辺で食べられています。
シラウオとの混同で踊り食いに逆風?
そんなシロウオの食べ方で最もよく知られているのが「踊り食い」です。これは生きているシロウオをポン酢などにつけ、そのまま口に流し込むというもの。生ならではの触感が楽しめるほか、生きたままの魚を飲み込み、その喉越しを楽しむという通人もいるようです。
しかし今、この「シロウオの踊り食い」に逆風が吹いています。
昨年末、青森県で「シラウオ」の生食が原因の寄生虫症「顎口虫症」の集団罹患事故が発生したのですが、これがシロウオにも飛び火したのです。
シラウオとシロウオは名前がよく似ており、現状では多くの人が混同しています。そのためこの事故のニュースを見て「シロウオの踊り食いは危険だ」と思ってしまった人が多かったようなのです。
ハゼ科のシロウオとキュウリウオ科のシラウオは、分類上も生態上も異なり、互いに縁遠い魚です。そして今回の集団罹患の原因となった顎口虫症は、シロウオによる罹患リスクは低いと考えられています。
確かに河口域に生息するシロウオにも異形吸虫という寄生虫が罹患している可能性があるのですが、顎口虫とは危険性に大きな差があり、今回の事故をもって「シロウオの踊り食いは危険だ」とするのは大変な誤解です。
シロウオの流通にかかわる人たちは、この件について一度アナウンスしたほうが良いかもしれないと考えています。
<脇本 哲朗/サカナ研究所>
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