企業にとってNO.2の存在は非常に重要です。その存在が会社を大きく左右することも、しばしば。ではいったい、どのような人をNO.2として採用すべきなのでしょうか?
株式会社 経営者JP代表取締役社長・CEO井上和幸氏に、いま活況のエグゼクティブ採用について、日々の現場で起きていることから幹部人材市場での大きなトレンドまでを解説していただきます。
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第五回は「No.2の存在を採用するときのポイント・採用時に気を付けたいこと」についてご寄稿いただきました。
NO.2には「番頭、参謀型」タイプ(「守り型」NO.2)と「事業を統括・執行する幹部」タイプ(「攻め型」NO.2)があります。それぞれについての採用ポイント、採用時に気を付けたいことを見ていきましょう。
「守り型」NO.2の場合
NO.2の必須要件は「正しく“忖度(そんたく)”できる」コミュニケーション力
正しく「忖度」できる力。
「番頭、参謀型」タイプのNO.2の要件はと聞かれて、私が真っ先に挙げたいのがこれです。
忖度というと、安倍政権時代のモリカケ問題(学校法人「森友学園」と「加計学園」をめぐる問題)の一件に端を発して以来、どうも「気を利かせて、先回りで対応や手配をすること」のような意味で多くの人たちの頭にパッと浮かぶようになってしまったように思えます。
下手をすると、会社のために改ざん・粉飾をするというような意味にも捉えられるようになりました。
しかし、 忖度の正しい意味は、「相手の心情を推し量る、慮ること」です。決して「何かおかしなことを配慮して行う」ことではありません。
優秀な「番頭、参謀型」は、現場、幹部、社長、それぞれに対して常に的確な忖度をします。そのことにより、トップにも現場にも適切な配慮を行って会話をし、あるときには上の意を下に、また、他のあるときには下の状況や思いを上に伝える通訳者の役割を果たします。
コミュニケーションの潤滑剤の要となるのが、NO.2という役割です。これをしっかり果たせる方が、NO.2として下からも上からも信頼され、番頭・参謀としての存在感、輝きを放ちます。こういうNO.2こそを、採用したいものです。
憎まれない「直言力」と、No.2に徹する性分、自覚、覚悟。
優秀なNO.2は、ズバズバものを言います。しかし憎めないキャラ、これが重要です。
明朗快活、陰口を叩かない、裏表がない。何よりも、心の奥にはトップや他の社員たちに対して愛がある。
トップに対して、言いにくいことを、相手が受け止めやすいかたちで、ストレートに言える力。すなわち直言力も必須要件です。ただし、社長、オーナーが素直に聴けるセットアップができることが大前提でもあります。
NO.2には、2つのタイプが存在します。
自分は黒子・参謀が性分であるので、今後もずっとNO.2でよいのだというタイプ。一方で自分は本来はトップの器だ、いま、NO.2でいるのは、いずれ現トップに代わって自分が上に立つときのためだというタイプ。
どちらのタイプもありですし、それぞれのタイプで古今東西ご活躍されたNO.2は多く存在します。
しかし、中長期的にNO.2である自分自身と、トップがお互い良好な関係が続くのは、前者のタイプのみです。
後者のタイプは、タッグを組んだ当初は機能することもあるのですが、早晩、お互いの我がぶつかり、表面化するか否かは置いておいても、経営チームとしては充分に機能しなくなります。
上のメッセージが「ツー・ボイス」になってしまったり、経営陣同士が陰で「アイツは」などという話を幹部や現場にしたりするようになります。
こういうNO.2を自分の参謀に据えてしまった社長は、思うような経営はできません。パフォーマンスが低いまま任期を終えるか、在任中にパフォーマンスを落として失脚します。
そこで、蹴落とした側のNO.2が「しめしめ」となるかと言いますとそうはなりません。なぜなら、この手のNO.2は実体としては人望がないからです。そのため、蹴落とした側のNO.2がトップの椅子に座ったとして、あいにくと充分に機能することが少ないのです。
優れたNO.2は、「自分は生涯、参謀・黒子でよい。」と本音で思っていること。ここはNO.2採用においては、選考プロセス中、時間を掛けてじっくり本音を確認したいところです。