健康の悩みがある潜在ニーズを発見

 博報堂はSOOとの協業のもと、「生活者ヘルスデータ®」をベースとしたスコアリング技術とSOOのビッグデータを組み合わせ、健康の悩みがある潜在顧客を発見してアプローチし、購買につなげるフルファネル対応のメーカー向け販促ソリューションを23年春から本格的に展開していく。

健康データを掛け合わせ潜在顧客のニーズを引き出す=博報堂
(画像=『DCSオンライン』より 引用)

 まずは、DgSで取り扱う高価格帯の健康サプリメントを対象に展開していく方針だ。スコアリングを活用したターゲティング広告やクーポンの配信、SOOが運営するDgS活用スマホアプリ「ドラポン!」での告知など、デジタル販促を実行し、広告接触率や購買率、継続率など、施策の効果をデータで検証する。

 この販促ソリューションにはID-POSデータとの連携が必要だが、セキュリティマネジメントの観点から自社が保有するID-POSデータを外部へ提供することに懸念を抱く小売企業も少なくない。そこで、小売企業がID-POSデータを博報堂に提供する必要がないように、SOOのシステム環境内でスコアが付与できる設計になっている。

 米国の小売業界では、収益率の低い本業外での新たな収益源としてリテールメディアを活用した広告事業を展開し、利益を確保しようとする動きが活発にみられる。一方、潜在顧客を発掘してターゲティングする需要創造型リテールメディアは、小売企業に広告収入をもたらすだけでなく、店舗の売上拡大にも寄与するのが特徴だ。メーカーにとっても、特定の商品を購入した「消費者」ではなく、より多面的な「生活者」の視点で健康の悩みの予兆を精緻にとらえ、潜在的なニーズにアプローチすることで新規顧客の獲得につなげられる。徳久氏は「広告はこれまでコスト効率ばかりが重視される傾向にあったが、今後は需要創造型にも変えていきたい」との方針を述べている。

小売業こそマーケティングを

データ連携で顧客像を特定

健康データを掛け合わせ潜在顧客のニーズを引き出す=博報堂
(画像=Segment of One & Only取締役CMO 山中俊幸、『DCSオンライン』より 引用)

 SOOはローカルドラッグチェーンがマーケティングでつながるボランタリーチェーンである。

 2008年6月に誕生、現在33企業が加盟し、加盟小売業の総年商は8000億円を有する。個社ではマーケティングやデジタルへの投資が難しいが、共通のプラットフォームをつくることで、効率的に活用できるようにしている。

 ローカル企業ではほとんどアプリを持っている企業がない中、14年に共通プラットフォームのアプリ「ドラポン!」をリリースしデジタルマーケティングの軸として運用している。

 小売業がメディアになる「リテールメディア」については5年以上前から目を付けていた。博報堂との実証実験を始めたのは3年前で、SOOが持っているID-POSデータに、「生活者ヘルスデータ」を掛け合わせることで、より顧客像を特定してマーケティングができるようになった。

 実証実験では対象のサプリメントの販売個数が約2倍になるなど、思った以上の成果が得られた。

 今後もこのようなデータ連携は確実に進んでいく。より顧客像を特定していき、ワン・トゥ・ワンマーケティングに近づけていきたい。

 販売のプロである小売業こそ、もっとマーケティングに力を入れていくべきである。

提供元・DCSオンライン

【関連記事】
「デジタル化と小売業の未来」#17 小売とメーカーの境目がなくなる?10年後の小売業界未来予測
ユニクロがデジタル人材に最大年収10億円を払う理由と時代遅れのKPIが余剰在庫を量産する事実
1000店、2000億円達成!空白の都心マーケットでまいばすけっとが成功した理由とは
全85アカウントでスタッフが顧客と「1対1」でつながる 三越伊勢丹のSNS活用戦略とは
キーワードは“背徳感” ベーカリー部門でもヒットの予感「ルーサーバーガー」と「マヌルパン」