■大規模イベントが目白押しのスポーツ業界
コロナ禍を経て、スポーツの大規模イベントの開催が世界各地で予定されている。8月には沖縄県などを開催場所として「FIBA バスケットボール・ワールドカップ」が、9月にはフランスで「ラグビー・ワールドカップ」が開催される。大谷翔平選手らが出場する「ワールド・ベースボール・クラシック」の開催も目前に迫っている。「東京オリンピック・パラリンピック」は無観客での開催となったが、イベントの開催規制もほぼ撤廃され、今後は会場に多くの観客が集うだろう。
セレクトショップ「ビームス(BEAMS)」を運営する株式会社ビームスには、スポーツ領域に着目して立ち上げたブランド「ビームス スポーツ(BEAMS SPORTS)」が存在する。「ビームス スポーツ」は、スポーツカルチャーの生み出すポジティブなエネルギーを身近に感じるためのきっかけを作るブランドで、まず2020年9月にウェブメディア『ビームス スポーツ』をローンチした。1976年に創業した同社は、ファッションを通じて培ってきたカルチャーに、スポーツを掛け合わせることで新しい価値観を提供し、セレクトショップからカルチャーショップへの進化を目指す。
2021年からは、プロダンスチーム「コーセーエイトロックス(KOSE 8ROCKS)」が着用するチームウェアを始め、東京都が主催するサイクリングイベント「グランド サイクル トーキョー(GRAND CYCLE TOKYO)」のユニフォームや山梨県で開催された「富士山マラソン 2022」の参加賞Tシャツなどを製作した。B.LEAGUEに所属するプロバスケットボールチームの「琉球ゴールデンキングス」とは、オリジナル商品やコンセプトムービーを作り、「ビームス スポーツ」として冠試合を行うなど、スポーツ業界との取り組みを拡大している。
「ビームス スポーツ」が手がけた「琉球ゴールデンキングス」のオリジナルファッションアイテム
■「ビームス スポーツ」が目指す役割とは
「ビームス スポーツ」に関わるスタッフは、ランニング、バスケットボール、フットサル、ダンス、テニス、野球、柔術、サイクリング、ヨガといった活動に参加しており、社内のスポーツとファッション好きが部署の垣根を越えて、同ブランドに多く集まっている。3時間を切るタイムでフルマラソンを走るスタッフもいるが、これまでのアパレル業界の「体育会系」のイメージとは異なり、スポーツウェアをファッションとして取り入れて自分らしく着こなし、スポーツを楽しむことを目的にしているのも特徴だ。ビームスの設楽洋社長もゴルフなどを楽しむ日常をたびたび自身のSNSで発信している。
「ビームス スポーツ」で陣頭指揮を執っているのがプロデューサーの佐野明政氏だ。スポーツとファッションを掛け合わせることは、『ビームス スポーツ』をスタートする前から行っていました。例えば、『ビームス ゴルフ(BEAMS GOLF)』が行っていた渋野日向子選手とのウエア契約をはじめとする、スポーツ選手へのファッションを通じたサポートや、2018年にロシアで開催されたサッカーのワールドカップでは、日本サッカー協会と一緒に、サムライブルーではなく、当社のコーポレートカラーに掛けてサムライオレンジというコレクションを立ち上げました。また、アディダスとサッカーウェアを作り、原宿の店舗でパブリックビューイングを開催したこともあります。店頭でも、さまざまなスポーツブランドを展開してきた実績があり、ファッションの背景にあるスポーツそのものを愛するスタッフにも恵まれています。こうした背景から、スポーツカルチャーにファッションの強みを活かしていく『ビームス スポーツ』が立ち上がりました」と、これまでの経緯について説明する。
佐野氏は、「ビームス スポーツ」にしかできないことを通して、新しいカルチャーやムーブメントを創出していきたいと考えているという。「海外のスポーツマーケティングはとても巨大で、日本でもそうなっていくことを望みます。例えば、ニューヨークでは『ヤンキース』のユニフォームやキャップをファッションとして取り入れて楽しんでいます。スポーツウェアが街に馴染んでいくことで、チームが街で広がっています。『ビームス スポーツ』がサポートしている『琉球ゴールデンキングス』の試合を観戦した際に、ファンたちが嬉しそうにチームのアイテムを購入している姿を見て、喜びを感じました。同時に、こうした取り組みを続けていくことで、『ヤンキース』と同じようなシーンが作れるのではないかと感じました。例えば『フジロックフェスティバル』などは、ファッション感度の高い人がたくさん集まっているフェスだと今では認識されていると思います。スポーツにおいても、観戦スタイルにもっとファッション性を加えて、スポーツのコミュニティにファッションのコミュニティの人たちを融合させていく促しこそが、スポーツ業界が私たち『ビームス スポーツ』に求めていることかもしれません。熱狂的なファンが多い分、入りにくいところがあるのかもしれませんが、気軽に入っていけるように裾野を広げていくことも私たちの役割だと思っています」。
佐野明政氏のスポーツ観戦記録として額装された半券コレクション。「FIFA ワールドカップ」はフランス、南アフリカ、ロシアにも足を運んでいる。サッカー以外にもNBAやMLBの試合も現地で観戦している。佐野氏の半券コレクションはまだまだ増えそうだ。
■スポーツを軸にしたコミュニティを作っていく
「ビームス スポーツ」のウェブメディアとPRを担当する桑原優季氏は、「まず、私たちビームスが培ってきた知見から、ビームスが考えるスポーツをウェブメディアの中で紹介していこうと考えました。商品を介してファッションを紹介する中で、オンライン上でクリエイティブ力を発揮して、お客さまにビームスの表現を伝えることにも自信がついていました」と話し、さらに「私自身もパーソナルジムに通い始めましたが、体を動かすことは本当に楽しいと感じます。気持ちもポジティブにもなります。自分の心身がいかに良い状態でいるか、外見だけではなく内面を重視する人間が増えて、自分を高める方にシフトしていっていると思います。社内のスタッフも洋服だけではなくて、ライフスタイルが大切だという意識が色濃く出ています」と、スポーツを通じて社内スタッフの意識の変化を感じているという。
スポーツはファッションだけではなく健康、あるいは心と体のバランスにも密接に結びついている。「ビームス スポーツ」がファッションを介してその橋渡し役になることで、スポーツ人口が増え、さらには健康長寿にも繋がるかもしれない。設楽洋社長も最近のインタビューで、「ファッション以外の切り口でもコミュニティを作っていく」と話す通り、「ビームス スポーツ」がスポーツを軸に新しいコミュニティを作っていくフロントランナーになりそうだ。ファッションとスポーツとの蜜月時代をプロデュースしていけるかどうか、「ビームス スポーツ」の今後の展開に注目したい。
「ビームス スポーツ」のタグ
文・高村 学/提供元・SEVENTIE TWO
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