茨城で計画が進んでいる大型の土木事業「霞ケ浦導水事業計画」。有益な点もある一方で、外来生物の生息域拡大が強く懸念されます。
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霞ヶ浦導水事業が17年ぶりに再開
茨城県にある全国で2番目に大きい湖・霞ケ浦と、同県を流れる那珂川、利根川を地下トンネルで結ぶという事業「霞ケ浦導水事業計画」。国土交通省は28日、工事が止まっていた「石岡トンネル」(延長24.7km)のうち、茨城県茨城町内の一部区間で掘削工事に着手しました。同事業のトンネル工事再開は実に17年ぶりのことです。
この事業は、霞ケ浦と利根川、那珂川を総延長45.6kmの地下トンネルで結び、水を行き来させるというもの。2030年度までの完成を予定しています。完了すれば、県下有数の一級河川が直接つながる形になります。
なぜつなげるの?
この事業が完了すると、霞ヶ浦とその上流部である桜川、県都水戸を流れる那珂川がつながります。
これらのいずれの水域も、茨城県内で農業・工業用水として非常に重要な存在です。しかしそれらによって過剰に利用されてきた影響で、水量の減少や水質汚濁が問題となっています。
今回の導水事業によって、大きな2つの水系で水を融通し合うことができるようになります。これにより、霞ケ浦や千波湖の水質浄化のほか、那珂川や利根川の渇水対策、そして開発著しい茨城県や千葉県などへの水道・工業用水の安定的な供給が可能となるのです。
立ちはだかる「外来魚問題」
そんな有意義なはずの事業が、なぜ10年以上もストップしていたのでしょうか。それは、那珂川流域の漁協が国を相手に、同事業の差し止めを求めた訴訟を起こしたからです。
那珂川はアユの生産が有名な川であり、漁協はこの事業がアユにもたらす弊害を懸念していました。国は対策として、那珂川からの取水時にアユ稚魚の吸い込みを防止するための対策などを検討しているといいます。
しかし個人的には、それよりはるかに大きな影響をもたらしうる懸念があります。それは「アメリカナマズの侵入」。霞ヶ浦を中心に利根川水系で猛威を振るう特定外来生物アメリカナマズが、地下トンネルを経由して那珂川に侵入してしまうと、その被害は計り知れないほど大きなものとなるはずです。
一度入り込むと根絶は困難であり、つながる前に対策を講じなくてはなりません。治水に関連する事業はしばしば環境保全がないがしろにされてしまうことがありますが、当事業がそうならないことを切に祈りたいです。
<脇本 哲朗/サカナ研究所>
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