もう少し説明すれば、両国の核心的利益を双方が支持表明し、連帯を示す狙いがあったはずだ。イランにとっては、国連安保理常任理事国5カ国とドイツを加えたイラン核合意(共同包括的行動計画=JCPOA)の再建と制裁解除、国民経済が厳しいイランへの北京からの貿易、農業、インフラなどの経済支援だ。一方、中国にとっては、台湾問題で「一つの中国原則」の確認、エネルギー問題のほか、人権問題に対する欧米側の批判への共同防衛体制の強化だろう。

習近平主席は14日、ライシ大統領との首脳会談の中で、女性のスカーフ着用問題で大規模な抗議デモに直面するイランに対し「如何なる外部勢力もイランの内政に干渉し、安全や安定を損なうことに強く反対する」とエールを送っている。中国とイランを結ぶもっと強い絆は「反米」だ。換言すれば、「共通の敵」が中国とイラン両国をパートナーにしているわけだ。

興味深い点は、ライシ大統領は15日、北京の東四清真寺(モスク)でイスラム教徒を前に演説していることだ。同師は「米国はタクフィリテロリスト(ムスリム同盟団の反主流派組織)を形成することで、西アジアの政治を不安定化させようとしている」と米国を批判し、「イランに対する米国の敵意は、イスラム共和国が独立国であるためだ。しかし、イランは以前よりも強くなった」と付け加え、イスラム革命後の中国との関係拡大を歓迎し、「両国にはさまざまな分野で関係を発展させる多くの能力がある」と述べている。

参考までに、米国は中国新疆ウイグル自治区のウイグルへの弾圧・同化政策を「ジェノサイド」と批判しているが、ウイグル人は主にイスラム教徒でスンニ派が多い。イラン(シーア派)にとってはイスラム教の兄弟だ。そのウイグル人を中国共産党政権は弾圧し、強制的に再教育キャンプに送り、同化政策を展開させていることに対し、ライシ大統領は一言も批判らしい声を発していない。そして悪いのは米国であり、タクフィリ勢力だと批判しているだけだ。

エフサーン・ハーンドージー経済・財務相(「イラン・中国合同経済委員会」イラン代表)は14日、イラン・デイリー紙とのインタビューで、イランと中国両国関係について、「2つの古代文明国は、さまざまな歴史的時期に常に双方にとって好都合なアプローチと戦略を採用してきた。ある日にはシルクロードのような商業ルートで機能し、別の日にはお互いの補完的な経済的および戦略的ニーズを満たしてきた」と描写し、「ライバルと敵の破壊的な作戦がエスカレートしても、両国は潜在的な同盟国となり、互いの発展のコストを効果的に削減できるだけでなく、協力の成功モデルを作成することにより、より広範な協力の中核を形成してきた。収益性の高いバリューチェーン(価値連鎖)の構築につながる」と報じている。なるほど、無神論国家の共産国とイスラム教国の連携は「収益性の高いバリューチェーンの創造」(the creation of profitable value chains)という新しい成功モデルをつくる試みというわけだ。

なお、テヘランからの情報によると、ライシ大統領は習近平主席をイランに招請、同主席は「都合のいい時期に訪問したい」と答えたという。

編集部より:この記事は長谷川良氏のブログ「ウィーン発『コンフィデンシャル』」2023年2月18日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はウィーン発『コンフィデンシャル』をご覧ください。