ロイター通信は15日、米政府関係者筋として、「4日撃墜された気球の本来の軌道はグアム、ハワイ経由だったが、強い風に流されて軌道を外れた」という。
米国防総省によれば、10日以後撃墜された3つの気球は「小さく、操縦することはできないものであった」という。だから、「何らかの種類の監視を行っていたと信じる明確な理由はない」と受け取られている。それゆえに、「2月10日以後、撃墜された3つの飛行物体は、4日に撃墜された中国製気球と明確に区別する必要がある」というわけだ(アラスカの悪天候のため、3つの小さな気球の破片はまだ未回収)。
ちなみに、中国製気球は民間航空機の飛行高度より高いところを飛行していたが、その後撃墜された3つの未確認物体の飛行高度は約6000kmと低く、民間航空機にとって危険だった。
軍事関係者の話によると、偵察気球は監視衛星より安価で製造できるうえ、地球の軌道に制限されることがなく、機動性があり、特定の地域を監視し、情報を収集するうえで適しているという。未発見の偵察気球が現在、どれだけ飛行しているかは不明だという。
「偵察気球」問題は米中間を一層険悪化させている。中国は米国側のスパイ疑惑説を否定。中国外務省の汪文斌副報道局長は14日、「米国は昨年、高高度気球を十数回中国領空に不法に侵入させていた」と米国を逆に非難。中国全国人民代表大会外事委員会は16日、米下院が9日に中国気球の米上空飛行を非難する決議を採択したことに対し、反論声明を発表するなど、情報戦を展開させてきた。
南米でも既に未確認物体(気球)が目撃されているが、「中国の気球が2020年、21年に日本の仙台市など東北地方でも目撃されていた」ということが明らかになり、日本政府は米国らと情報を交換している。また、ウクライナ空軍は16日、ロシアからキーウに侵入してきた複数の偵察気球を撃墜したという。未確認物体、気球の出現は世界の安保情勢を変える様相を見せてきている。
編集部より:この記事は長谷川良氏のブログ「ウィーン発『コンフィデンシャル』」2023年2月17日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はウィーン発『コンフィデンシャル』をご覧ください。