本日発売されたウエイトトレーニング雑誌「IRONMAN2023年3月号」の特集は「アーノルド推薦!知られざるプルオーバーの効果」。SNSで特集の情報が公開されると、トレーニング愛好家たちが独自のプルオーバー論を展開し話題となった。ここでは、本特集からボディビル世界チャンピオンの鈴木雅選手が解説する『正しく行うためのプルオーバー概論』の一部を紹介する。

トレーニング愛好家の間で「プルオーバー」が話題に!ボディビル世界王者が詳しく解説
(画像=『FITNESS LOVE』より 引用)

プルオーバーを初めて実施して「どこに聞いているのか分からなかった」という人は少なくないだろう。そのため、自分にとって正解となるフォームを掴みづらい種目と言える。ここでは、鈴木雅選手が導入となるプルオーバーの効果を解説。

なぜプルオーバーを行うのか

プルオーバーを行う理由は、大きく2つに分けられます。一つは筋肉の発達、そしてもう一つがコレクティブエクササイズとして身体の機能を改善するためです。

プルオーバーは大胸筋や前鋸筋、広背筋などの発達に効果があると言われています。だから、それらの筋肉を鍛えるためにプルオーバーをやりましょう……という話になるのですが、さらに大きな視野でとらえていくと、ボディメイク以外の面での様々なメリットが見えてきます。

例えば、プルオーバーをやることで前鋸筋を鍛えられてしっかりと機能するようになると、肩甲骨の後傾の動きが出しやすくなります。さらに肩甲骨が安定しやすくなり、大胸筋への刺激にも効果があります。また、その状態で、プルオーバーを実施すると小胸筋が発達し、大胸筋上部が下から押し上げられ、ボリューム感が増します。

さらには、肩甲骨の後傾がしっかりと出せることにより、広背筋も発達しやすくなります。例えば広背筋の中部を鍛えるとしましょう。まずは肩関節を屈曲して、両腕を斜め前に上げます。「気をつけ」から、上向きの「前にならえ」です。ここでは肩甲骨を安定させておかなければいけません。肩甲骨の後傾を保ったまま安定させて肩関節を屈曲すると、広背筋中部が自然と伸ばされていきます。

しかし、肩甲骨が前傾すると、肩甲骨が上がってしまい、僧帽筋に刺激が逃げやすくなります。そこからプル動作を行うと、肩甲骨を下げられず、広背筋よりも大円筋への刺激が強くなります。

プルオーバーを行うことで胸の上部が開きやすくなり、体型が変わり、肩甲骨のポジョションもよくなります。そして、そうした姿勢の改善は大胸筋上部や広背筋の種目にも寄与し、やがてはそれらの部位の発達につながっていきます。つまり、「これをやれば●●筋が鍛えられる」という単一的なものではなく、筋肉の発達以外にも、正しい動作が行える身体に正常化してくれるところにプルオーバーという種目の醍醐味が存在するのです。

取材:藤本かずまさ 構成:FITNESS LOVE編集部 (初出IRONMAN2023年3月号)