川崎病との類似点は多いものの相違点も多く、MAS-Cの定義ははっきりしていない。今回の論文では、MIS-Cと診断された5人の血縁関係のない患者で、OAS1、OAS2、RNASEL遺伝子のいずれかにおいて常染色体劣性遺伝と考えられる異常が見つかったことを報告している。
OAS1とOAS2は細胞質内に存在する二本鎖RNAに反応して、2‘-5’オリゴアデニレートを産生し、さらにそれらが、RNA分解酵素であるRNase Lを誘導しウイルスRNAの分解を起こして、RNAウイルス感染症を抑え込んでいるとのことだ。
RNAが分解できないとMitochondrial antiviral-signaling protein (MAVS)(ミトコンドリアにあるウイする感染を感知するタンパク質)を通して全身で激しい炎症反応を引き起こすようだ。これを書いていても私自身が複雑だと感じているので、読者にはわかりにくいと思う。
一言でまとめると免疫反応は、「適度」が大切だが、多様性に非常に富んでおり、理解できないことが多い。これからは人間の免疫システムの多様性を調べることが、とってもとっても重要だということだ。
私が重要性を強調してから10年も20年もしないと日本は動き出さないが(オーダーメード医療・遺伝子多型・ゲノム医療・がんゲノムのように)、免疫ゲノムは今ならチャンスはある。日本の医学も医療も医療経済も革命が必要だ。学問が理解できない人たちが政策を決めているから、今のように日本は没落しているのだ。

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編集部より:この記事は、医学者、中村祐輔氏のブログ「中村祐輔のこれでいいのか日本の医療」2023年2月13日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は、こちらをご覧ください。