つみたてNISAの最大のメリットは、「利益に対する税金がかからないこと」にある。この節税効果を最大化するには、「期間」と「手数料」の2つをコントロールすることが重要だ。せっかくの非課税制度、恩恵を余すところなく享受したい。
つみたてNISAで毎月3万円を20年間運用すれば利回り1%でも15万円の節税
運用益に対する課税は、実質的・心理的に意外なほど重い。時間をかけて下調べをして、リスクを負って自己資金を投下した結果得られた利益が、20.315%も目減りしてしまうのだ。手にするのが10万円と7万9,685円ではずいぶん違う。
つみたてNISA口座で運用すれば値上がりによる利益と配当金は非課税だ。購入した年から20年間非課税期間は継続する。投資できる金額には年間40万円の上限が設けられているが、20年間なら総額にして800万円を非課税で投資できることになる。
出典:金融庁『つみたてNISAの概要』
どのくらいの節税額になるのか、ツールを使って試算してみよう。(※モーニングスター株式会社が運営するつみたてNISA節税シミュレーションにて算出)
40歳から20年間、毎月3万円、利回り年1%で運用した場合
- 投資額:720万円
- 運用結果:796万2,967円
- 20年間の運用益:76万2,968円
- 非課税総額:15万4,997円
年間投資枠は40万円なので、月額上限は3万3,000円に設定している金融機関が多い。仮に3万円投資したとして20年間、年間利回り1%で運用すれば、投資額720万円に対し利益は76万円になる。本来15万円以上の税金がかかるところだが、つみたてNISAなら非課税だ。マイナスになることを見越して控えめな利回りで試算してもこの節税額なので、利益が大きい場合の恩恵はさらに大きいことがわかる。
つみたてNISAの利益最大化に必要なこと1……できるだけ長く資産を保有
非課税のメリットは、利益が大きければ大きいほど最大化できる。そうは言ってもどうすれば利益の出やすい運用ができるのだろうか。確実に儲かる投資先を探すのは難しい。ならば極力リスクを減らす方向に注力したい。
リスクを抑える手法としては(1)投資対象の分散、(2)投資時期の分散、(3)長期的な保有が有効だ。このうち(1)は(2)はつみたてNISAなら自動的にクリアできる。投資対象が投資信託に限られるので、複数の株や債券に分散して投資する仕組みになっている。少額ずつ積み立てるので投資時期の分散もできる。問題は(3)である。
つみたてNISAは投資枠の範囲内であれば短期に売買することも可能だ。しかし、リスクを抑えて安定的なリターンを得たいのならば、長期に保有するのがよいだろう。過去の統計から長期的な投資をすることによって収益が安定化することがわかっているからだ。
国内外の株式・債券に投資した場合、保有期間が5年なら投資収益率がプラス12~14%のものからマイナス8~6%のものまでばらつきがあるが、保有期間20年だとプラス2~8%に収斂されるとある(金融庁の平成27事務年度「金融レポート」より)。つまり、長く継続する方がリスクは安定するのだ。
つみたてNISAの利益最大化に必要なこと2……手数料の安いファンドを選ぶ
投資によって利益が出ようが出まいが、必ずかかってくるのが手数料だ。この手数料をいかにおさえるかが利益を最大化するカギになる。つみたてNISAは対象商品が投資信託に限られるので、発生する手数料は「購入時手数料(販売手数料)」、「運用管理費用(信託報酬)」、「信託財産留保額(解約手数料)」の3種類だ。特にここでは信託報酬に注目したい。
購入時手数料や信託財産留保額は、言ってみれば一過性のコストに過ぎない。しかし信託報酬は保有している限り毎日発生するコストなので、長期保有であればなおさら低く抑えたいところだ。
つみたてNISAでは対象商品に組み入れる条件として、信託報酬を一定以下とする厳しい条件が課せられている。一般NISAのように極端に高いものは存在しない。以下は商品分類ごとの告示で定める上限、カッコ内は2018年10月31日時点のつみたてNISA公募投信の平均である。
インデックス型投信
国内株式型 0.50%(0.27%)
海外株式型 0.75%(0.33%)
内外株式型 0.75%(0.22%)
国内資産複合型 0.5%(0.28%)
海外資産複合型 0.75%(0.60%)
内外資産複合型 0.75%(0.35%)
※資産複合型は株式・債券・不動産投信等を投資対象とする
アクティブ運用投信
国内株式型 1.00%(0.95%)
海外株式型 1.50%(1.50%)
内外株式型 1.50%(0.31%)
国内資産複合型 1.00%(1.0%)
海外資産複合型 1.50%( - )※対象なし
内外資産複合型 1.50%(1.14%)
銘柄を選ぶ際には、注目している商品がカッコ内の数字よりも高いか低いかを基準にするとよいだろう。一見小さい数字に見えるが、信託報酬率の違いは大きなコストの違いを生む。
たとえば、国内株式型はインデックス型とアクティブ型では信託報酬率が0.5%違う。信託報酬率が0.5%の商品を毎月3万円ずつ20年間投資すれば、支払う手数料総額は35万4,472円になるが、1.0%の商品なら68万6,222円だ。たった0.5%の違いがこれほど利益を圧迫するのである。
つみたてNISAはリスクとコストを抑えて利益を最大化する
もともとつみたてNISAは安全で長期的な資産形成のために作られた制度だ。わざわざ一般NISAと別に作られたのも、この点を徹底するためである。「今すぐたくさん儲けたい」ではなく、「じっくり育てる」スタンスで臨みたい。そのためにも「リスク」と「コスト」を抑えることが重要なのだ。
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