横浜F・マリノス DF上島拓巳 写真:Getty Images

2月11日に国立競技場にて行われたFUJIFILM SUPER CUP(スーパー杯)で、2022シーズンJ1王者の横浜F・マリノスと、天皇杯覇者ヴァンフォーレ甲府が対戦した。最終スコア2-1で横浜FMがスーパー杯を制している。

甲府の堅守に手を焼く時間帯もありながら、横浜FMがいかに勝利を手繰り寄せたのだろうか。ここでは同試合展開を振り返り、特に横浜FMの新たな攻撃の起点となる可能性を見せたDF上島拓巳のパスセンスと判断力について、詳しく解説したい。


横浜F・マリノスvsヴァンフォーレ甲府、先発メンバー

横浜FM対甲府の試合展開

試合は前半30分、横浜FMが自陣後方からのパスワークで敵陣へ侵入。FWアンデルソン・ロペスがペナルティエリア右隅からクロスを送ると、逆サイドから走り込んだエウベルが右足でシュートを放ち、先制ゴールを挙げた。

同44分に甲府のカウンター。MF鳥海芳樹の横パスを受けたFWピーター・ウタカが同点ゴールを挙げるも、J1王者は動じず。後半15分に横浜FMセンターバックのDF角田涼太朗が敵陣へボールを運ぶと、ペナルティエリア左隅へ走ったロペスに縦パスを供給。29歳のブラジル人FWが放ったシュートがポストに当たり、こぼれ球をFW西村拓真が押し込んだ。これが決勝ゴールとなっている。

試合全体を通じ、自陣後方から丁寧にパスを回す基本布陣[4-2-1-3]の横浜FMに対し、甲府が[4-4-2]の守備ブロックで構える展開に。

甲府のMF長谷川元希とウタカの2トップが横浜FMの2センターバックに睨みをきかせつつ、MF喜田拓也とMF渡辺皓太へのパスコースも遮断。鳥海とMF水野颯太の両サイドハーフも守備時に内側にポジションをとり、横浜FMのパスワークをサイドに追いやろうとした。

この甲府の堅守を打ち破るきっかけを作ったのが、2022年12月に柏レイソルから横浜FMへの完全移籍を果たしたDF上島拓巳である。

横浜F・マリノス DF上島拓巳 写真:Getty Images

新加入DF上島が見せつけたポテンシャル

右サイドバックとして先発したDF上島拓巳は、甲府のプレッシングを浴びにくいタッチライン際にポジションをとり続け、自軍のビルドアップを下支えした。前半8分すぎには右サイドに流れた西村へパスを送ると見せかけ、センターサークル付近へ降りてきたロペスに楔のパスを供給。上島が甲府の2ボランチの背後にパスを通したことで、横浜FMの攻撃が加速した。

前半29分すぎにも、自陣右サイドでボールを受けた上島がセンターサークル付近へ中距離パスを繰り出し、これが甲府の2ボランチの背後に立っていた西村に繋がる。ここからMF水沼宏太、ロペス、FWエウベルの順でボールが渡り、前述の通り横浜FMが先制ゴールを挙げたのだ。

ここでは甲府がハイプレスを仕掛けたことで、4バックと中盤の2ラインが間延び。この綻びを見逃さず、MF佐藤和弘とMF松本凪生の2ボランチの背後へパスを送った上島によってもたらされたのが、前述のゴールと言えるだろう。26歳の新加入DFが、今季初戦で非凡なパスセンスと判断力を見せつけた。


横浜F・マリノス ケヴィン・マスカット監督 写真:Getty Images