ジェンダーレスが推進される現代ですが、魚介類の価値という点においては性別の差が残り続ける部分があります。
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マダラが豊漁で白子もお値打ちに
冬になると旬を迎えるとされる「鱈」。その代表種であるマダラが、昨年に続き今年も豊漁となっています。
主要産地のうち、秋田や青森など本州東北地方沿岸での水揚げは例年通り、または多少不漁気味なのですが、それを補って余りある北海道での豊漁の影響で、全国的な市場価格も例年より大きく下がっているといいます。
そしてそれに伴い「キク」「タチ」と呼ばれ人気の高い「マダラの白子(精巣)」も、今年は比較的手が出やすい価格になっています。かつては高級品と呼べる価格でしたが、現在は廉価な量販店でも国産白子が購入できるほどになっているようです。
オスが高価なマダラとメスが高価なスケトウダラ
このマダラですが、オスとメスで価格に大きな差があることが知られています。例えば昨年末頃の豊洲市場での卸値価格では、オスが1000円/kgほどだったのに対し、メスはなんとその半額ほどでした。
これはマダラの場合、精巣(白子)が卵巣(真子)よりはるかに珍重されることが理由です。
一方で近縁種であり漁獲量も多いスケトウダラは、逆にメスのほうが高値になることも多いです。これはスケトウダラの白子が、マダラのそれと比べて市場価値が低いのに対して、真子(卵巣)はたらこ、明太子などの原料品として重要な存在であるからだといえます。
魚の価格を決めるのは生殖巣
これらのタラのように、オスとメスの価値の差が生殖巣によって発生する例は枚挙にいとまがありません。
もっとも極端なものはトラフグで、オスの白子はあらゆる魚のそれの中でもトップクラスの味わいと言われ泣く子も黙る高級食材ですが、メスの真子は猛毒でごく一部の例を除き食用にできず、価値はほとんどありません。そのためトラフグは、同サイズならオスのほうがメスよりもはるかに価値が高く、価格もそれに伴います。
一方、逆の例となるのがサケ。いくらの原料となる真子は「海のルビー」とも言われ珍重されますが、白子は惣菜用に叩き売られる程度のものであり、価格はメスのほうが遥かに高くなります。
これらの例を見れば、魚の価格の精査はその生殖巣によって決まってしまうようにも見えます。しかし実際はそういったものだけではありません。
体格差で差がつくことも
例えば「本あんこう」として知られるキアンコウはメスが、「ハッカク」として流通するトクビレはオスが、生殖巣の有無にかかわらず通年高値となります。
これらの魚はいずれもオスとメスの体格差が極端で、かつ大きいもののほうが歩留まりが良いこともあり、食材としての利用しやすさに大きな差が出ます。結果として、キロ単価で見ても価格に大きな差が出ることが多いのです。
<脇本 哲朗/サカナ研究所>
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