2020年にロレックスの新作として登場した、オイスターパーペチュアルのターコイズブルー文字盤。今日時計界のカラー文字盤ブームとも言える世界的なトレンドはこれが火付け役となったと言っても過言でない。実は筆者が展開している時計ブランド“アウトライン”でも、それにあやかって同様のターコイズブルーを文字盤に採用した369ブルースペシャルという新作を22年11月下旬に発売した。そして何と、2種類あるうちのプレーンなタイプは1カ月半で完売するという勢いで、その人気の高さにあらためて驚かされた次第である。

そんないまだ人気の衰えないカラー文字盤ブームだが、実は1970年代にも起こっている。しかし、当時はどちらかというとセイコー、シチズン、そしてオリエントといった日本の時計メーカーに顕著だったようだ。

これについて筆者が刊行するアンティーク時計専門誌「LowBEAT(ロービート)」で、70年代の時計デザインを特集したときに、あるプロダクトデザイナーに話を聞いていて記事にしたことがある。その一部を引用するとこんなことを語っていた。

「60年代のサイケやヒッピーなどからくるカラフルなファッションが注目された時代を経て、70年代に入ると一般家庭にカラーテレビの普及が加速し、色をリアルに消費者に訴求できるようになった。このことも大きかったのではないか」

【懐かしい】1970年代の日本にもあった腕時計のカラー文字盤ブーム。その背景にあったこととは!?
(画像=『Watch LIFE NEWS』より 引用)

確かにこの時代の家庭家電や食器などを見るとカラフルなものが多く訴求されており、カラー化はこの時代において新しさを表現するにはちょうどよかったとことも背景にあったのであろう。

一方、今回のカラー人気はどうか。2020年といえばまさにコロナ禍において感染への恐怖が広がるとともに、これまでの日常が奪われるなど、すべての社会活動が停滞した年だった。抑圧されたそんな雰囲気を少しでも明るくしたいという思いは少なからずあったはず。

おそらくロレックスのオイスターパーペチュアルは、それを狙ったというよりは、コロナよりずっと前に製品化自体は決まっていたと思われるため、偶然にもそういった欲求にタイミング良くハマったことが人気を加速させたひとつの要因として挙げられるのかもしれない。

さて、ここに取り上げた時計。ターコイズブルーではないが目の覚める神秘的な青が印象的である。この個体、75年に諏訪精工舎製で作られた初代(初出74年)スーペリアである。クォーツの量産を進めるなか開発された38系キャリバー(普及機)をさらに高精度化し月差±2秒程度に収めたCal.3883を搭載する。

定価は大卒初任給が約9万円の時代に20万円以上とかなりの高額。そのためクォーツといえど外装の作り込みは半端でない。ザラツ研磨が施されたケース、世界一美しい蝶と言われているモルフォ蝶の羽を転写したブルー文字盤、さらにインデックスはミニッツ表示までもがアプライド仕様でしかもポリッシュ仕上げという手の込んだ作りになっているかなりの逸品だ。

提供元・Watch LIFE NEWS

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