ただし、仮に中国が挑発行為に踏み切る決断をしたのであれば、非常に危険な賭けだったことに違いありません。両国の衝突リスクはもちろん、足元で米下院は対中強硬派ぞろいの共和党が僅差ながら多数派を握っています。実際、バイデン政権の対応をめぐり「弱腰だ」、「撃墜に時間を掛け過ぎた」と非難轟々です。
米国防総省によれば、トランプ前政権でも同様の中国偵察気球が米国上空付近を飛行したとされています。エスパー元国防長官は認識していないと否定していますが、中国の偵察気球をめぐり民主党と共和党の対立が一段と激化しないとも限りません。
米国民の感情を逆なでしたことは間違いないでしょう。ただでさえ、対中高感度は低下の一途をたどり、ピュー・リサーチ・センターが22年9月に発表した世論調査結果では、ご覧の通り「好ましくない」が過去最悪の82%と記録を更新中です。
チャート:悪化をたどる米国人の対中感情
(作成:My Big Apple NY)
バイデン政権としては、共和党の批判だけでなく米国民の声を聞く必要に迫られていることは間違いありません。ワシントン・ポスト紙/ABCが1月27日~2月1日に実施した世論調査では、民主党支持者と民主党寄りの無党派層の間で「2024年の米大統領選にバイデン氏以外の候補を望む」との回答が58%と、バイデン氏の再出馬を期待する回答の31%を上回っていました。今こそ、強い指導者たる存在感をアピールするときでしょう。
編集部より:この記事は安田佐和子氏のブログ「MY BIG APPLE – NEW YORK –」2023年2月6日の記事より転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はMY BIG APPLE – NEW YORK –をご覧ください。