それを聞いた司教会議議長はキレてしまったのだ。同議長は日刊紙ヴェルトで、「昨年11月に教皇と会ったとき、私たちは2時間半、教皇と一緒に座った。教皇は私たちに話す機会はあった。にもかかわらず、メディアのインタビューを通じて、教会の聖職者と信徒が改革プロジェクトについて話し合うシノドスの道を、エリートによるイデオロギープロジェクトと表現し、私たちの改革を批判している」と非難している。

同議長はまた、フランシスコ教皇がインタビューの中で、独身制の見直しについて「イデオロギーに基づく刷新案」と指摘したことに言及し、「教皇自身がアマゾンシノドスでこの聖職者の独身制について討論を許可したはずだ。それを後日、イデオロギー論争と形容し、聖霊が働かないと非難するのは理解できない」と説明している。

独司教会議の司教たちは昨年11月、バチカンを5日間、「アドリミナ」訪問し、教皇らと会談したが、改革案では理解が深まらずに「成果なく終わった」(ベッツィング司教)という。ローマ教皇は既に何度か独教会の「シノドスの道」を批判している。それに対し、ベッツィング司教は、「われわれはカトリックであり、今後もそうあり続けるが、別の方法でカトリックであることを望んでいる」と述べている。

当方はバチカン情報を久しくフォローしてきたが、司教会議議長がローマ教皇を直接批判した例を知らない。同議長の発言を読んで、「議長は大丈夫か、解任されるのではないか」という思いすら沸いてきた。

事の発端は5人の独教会の枢機卿、司教たちが昨年12月、バチカンに「シノドスの道」に参加すべきかを問い合わせたことから始まった。彼らは主に保守派に属する聖職者たちだ。独教会には保守派聖職者と改革派がいるが、「シノドスの道」を多くの教区が支持している。その1人、カール・ハインツ・ヴィーゼマン司教は30日、「フランシスコ教皇はドイツの改革案について正しい報告を受け取っていないのではないか」と推測している。

マルティン・ルター(1483~1546年)の宗教改革の発祥国ドイツでは歴史的に教会改革への機運が漂っている。教会改革の精神が今も流れているといわれる。独司教会議とフランシスコ教皇との関係が険悪化し、修復不能となれば、最悪のシナリオはバチカン派と反バチカン派で独教会が分裂する危険性がでてくる。

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編集部より:この記事は長谷川良氏のブログ「ウィーン発『コンフィデンシャル』」2023年2月1日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はウィーン発『コンフィデンシャル』をご覧ください。