トロイダル・プロペラはボートの騒音も燃料消費量も大幅に低減させる

シャロウエンジニアリングが開発するボート用トロイダル・プロペラ
Credit:Sharrow Engineering

大きな音は、空を飛ぶときだけでなく、海上を前進するときにも発生します。

ボートや船にはスクリュープロペラが欠かせませんが、これが近くの人の声が聞こえなくなるほどの大きな音をまき散らすのです。

騒音のメカニズムは次の通りです。

まず、プロペラ先端で渦が発生。

この渦の内部が低圧になることで、気泡が生成(キャビテーションという)されます。

そして気泡が弾けるときに大きな衝撃が生まれ、これが振動や騒音、推進力の低下に繋がっているのです。

ボート用トロイダル・プロペラのブレード先端はねじれて他と繋がっている
Credit:Sharrow Engineering

シャロウエンジニアリング社は、こうした騒音問題に対処すべく、ボート用のトロイダル・プロペラを開発しました。

MITのドローン用トロイダル・プロペラとは形状がいくらか異なりますが、こちらのボート用トロイダル・プロペラでも、ブレードの先端が他のブレードとねじりながら繋がっています。

ドローン用よりも立体的なループ構造が採用されていますね。

従来のスクリュープロペラ(左)では渦が発生するが、開発されたトロイダル・プロペラ(右)では抑えられている
Credit:Sharrow Marine(YouTube)_University of Michigan TEST FOOTAGE SHARROW PROPELLER(2019)

そして上の動画で示されているように、この構造によってプロペラの渦が抑えられ、キャビテーションによる騒音もなくなります

下の動画でも、トロイダル・プロペラ(上)のブレード先端からはキャビテーションが発生していないのがよく分かります。

従来のスクリュープロペラ(下)では、ブレード先端に螺旋状のキャビテーションが見られる。トロイダル・プロペラ(上)では発生していない
Credit:Sharrow Marine(YouTube)_SHARROW PROPELLE vs Standard Stainless CAVITATION(2019)

結果として、ボートの騒音を大幅に低減させることに成功しました。

下記の動画で違いを確認してみてください。

また性能の面でも大きなメリットがあります。

従来のスクリュープロペラと比べて燃料消費量を約20%削減でき、3000RPM(1分間での回転数)では約2倍の効率を生み出すのです。

RPM(1分間での回転数)における効率の比較。(赤線)従来のスクリュープロペラ、(青線)トロイダル・プロペラ
Credit:Sharrow Engineering

シャロウエンジニアリング社が開発したトロイダル・プロペラは、現在販売中です。

従来のプロペラの常識を覆す「トロイダル・プロペラ」に、徐々に注目が集まっています。

今後、様々なマシンに採用されていくかもしれませんね。

参考文献
toroidal propellers turn your drones and boats into noiseless machines