人は記憶したいものとそうではないものとを無意識に選り分けるものだ。記憶したい内容は一般的には良き思い出、成功した出来事だが、苦しかった出来事や敗北、自身が後悔している言動はできるだけ早く忘れたい。シャーロックホームズの「マインド・パレス」で保管される記憶の世界は厳密に選択された事例、出来事だけだ。それ以外の事例は時間の経過と共に忘却の川に流され、時には変質されていく。

「ホロコースト記念館」の犠牲者の名前と写真を連ねた部屋(ウィキぺディアから)

「1月27日は「ホロコースト犠牲者を想起する国際デー」(International Holocaust Remembrance Day)だ。国連総会は2005年、アウシュヴィッツ=ビルケナウ強制収容所が解放された1月17日を「ホロコースト(大量虐殺)犠牲者を想起する国際デー」と決めた。

ナチス・ドイツ政権が倒れ、第2次世界大戦が終わって今年で78年目を迎える。27日の「ホロコースト犠牲者を想起する国際デー」、ニューヨークの国連本部や欧州の各地で関連のイベントが挙行された。国連本部では26日からホロコーストで殺害された480万人の犠牲者の名前が記された本が掲示され、犠牲者を追悼している。ヤド・ヴァシェム記念館とイスラエル国連代表団の協力により、来月17日までマンハッタンのイーストリバーの国連の中で「名前の書」を見ることができる。訪問者は、ナチスによって殺害された人々の名前をアルファベット順に閲覧できる。多くの場合、彼らの生年月日と死亡場所が記載されている。

国連のアントニオ・グテーレス事務総長は27日、「ホロコーストを直接証言できる人はますます少なくなってきた。記憶のたいまつを運ぶ新しい方法を見つけ出す必要がある」と述べ、今回の展覧会を通じて追悼の文化の再生を呼び掛けている。「新しい記憶の文化」の創造ともいえる。

第2次世界大戦中、600万人のユダヤ人が殺害された。そのホロコーストの記憶を世代を超えて受け継いでいくべきだ。国連事務総長が述べたように、「世界は今日でも憎悪に対しての免疫を持たない。人間の残虐性の潮流を食い止め、反ユダヤ主義、人種差別と闘わなければならないのだ。アウシュビッツの元収容者は、「世界はアウシュビッツから何も学んでいない。その後もボスニア・ヘルツェゴビナ紛争など民族戦争が繰り広げられていった」と指摘する。